製造品質記録の改ざん防ぐSCADA/IIoTプラットフォーム、「DXの第一歩」に:製造業IoT
リンクスは2022年5月13日、SCADA/IIoTプラットフォーム「zenon」に関する説明会を開催した。工場やプラントの機器から製造/品質記録や情報の変更履歴などを収集し、かつ誤記や改ざんを防ぐ仕組みを提供することで、データインテグリティを担保する。
リンクスは2022年5月13日、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)/IIoT(産業用IoT)プラットフォーム「zenon」に関する説明会を開催した。工場やプラントの機器から製造/品質記録や情報の変更履歴などを収集し、かつ誤記や改ざんを防ぐ仕組みを提供することで、データの完全性や正確性(データインテグリティ)を担保する。
デジタル化で製造/品質データの改ざん防ぐ
zenonはオーストリアのCOPA-DATAが開発、提供するソフトウェアプラットフォームで、製薬業界を中心に世界中で使用されている。工場やプラントの設備、機器から履歴やアラートなどのデータを収集して、統合的にデータを保管、管理することができる。国内では10社前後の製薬メーカーがすでに導入しているという。
製造/品質記録を「いつ、誰が、どこで、何を、どのように」変更したかを独自のバイナリ形式で保存する。これらの記録を設備機器から個別にExcel形式などで収集した場合、テキストデータの改ざんが生じる恐れがあるが、こうしたリスクを防ぐ。
また、zenonはPLCとMES(製造実行システム)の中間層に当たるSCADAであり、製造情報の格納に適している点も特徴だ。例えば、重要工程パラメーター(CPP)のような時系列データを各種機器のPLCから収集し、PLCマスターを作成、格納しようとすると、仕組みづくりに膨大な開発工程を要する。zenonであればこうした手間を省力化し、マウス操作のみで全ての製造/品質記録を収集できる。
加えてサーバ上にあるzenonから機器ごとのユーザー管理や検索を一括で行えるため、個々の設備機器でユーザー設定の変更などを行う必要がなく、その点でも利便性が高いという。この他にもレシピ管理や自動レポート生成機能を有しており、タブレット表示にも対応する。
製薬業界では製品が定められた方法で製造されたかを、自社が記録した製造データや品質保証データから監査証跡を作成し、証明する必要がある。ただし、記録を紙媒体で実施する場合、データの破棄や改ざんが行われるリスクがある。規制当局にデータインテグリティが損なわれていると判断されれば、当該製品だけでなく生産ラインを有する工場全体の信用問題にも発展しかねない。
また、データインテグリティの実現には、データ生成と記録を同時に行う必要がある(同時性)など、いくつかの基本要件が定められている。これらの要件を満たす上で、紙媒体をベースとした作業は現場に大きな負担を生じさせかねない。こうした理由から、製薬業界ではデータインテグリティ担保の仕組みをデジタル化する動きが広まっている。リンクス 代表取締役の村上慶氏は「半導体業界や電力業界でも同様の動きが見られるようになっている」と語った。
村上氏は製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を念頭に、「DX実現には製造データや設備データなど数百点もの時系列データを扱う必要があり、CPPはそのデータ群の一部にすぎない。一方で、SCADAをベースにしたデータインテグリティ担保の仕組みは、DX実現の第一歩でもある」と語った。
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