キヤノンのMRシステム用HMDに広画角化と軽量化を両立する「MREAL X1」登場:VR/AR/MRニュース(2/2 ページ)
キヤノンは、MRシステム「MREAL」用のヘッドマウントディスプレイの新製品「MREAL X1」を2022年6月上旬に販売開始する。広画角化と軽量化ニーズに応える製品で、従来機種と同じくビデオシースルー方式を採用し、現実世界とCG映像を違和感なく融合させた臨場感のあるMR体験を提供する。
広画角化と軽量化ニーズに応える「MREAL X1」の4つの特長
MREAL X1の特長は大きく4つある。1つ目は、広画角化だ。同じエントリーモデルのMREAL S1の視野角が水平方向に約45度、垂直方向に約34度だったのに対して、新製品のMREAL X1では視野角が水平方向に約58度、垂直方向に約60度と、縦横に画角を大きく拡大。これにより、MREAL S1比で2.5倍ほど表示面積が広くなり、頭を動かすことなく、複数のポイントを同時に視野に入れられるようになる。
2つ目は、小型・軽量/高画質/高精度の最適バランスの実現だ。解像度は、MREAL S1が左右各約1600×1200画素だったのに対して、MREAL X1は左右各約1920×2160画素となっている。
また、MREALシリーズでは現場からのフィードバックを受けて、特に軽量化に注力している。今回のMREAL X1では、画角を大きく広げながらも、従来機種と同様に小型・軽量設計を施すことで、本体サイズを約186×150×250mmとし、重量もMREAL S1からわずか約21g増の約359gにとどめ、長時間利用における負荷軽減に寄与する。
歴代の製品ラインアップの中でも、MREAL S1とMREAL X1に関しては、大幅な小型化・軽量化を果たしている。画角を広げるにつれてサイズが大きくなってしまう自由曲面プリズムを新規光学系レンズへ置き換えたことによる厚みの減少と、レンズ素材の最適化による軽量化が貢献している。広画角モデルの「MD-20」のディスプレイ部の重量が約360gだったのに対して、MREAL X1のディスプレイ部の重量は約158gと大幅な軽量化を果たしている。
同時に、小型化・軽量化のトレードオフの関係にある熱対策に関してもキヤノンのモノづくりのノウハウやシミュレーション技術を活用することで、ファンを用いることなく、装着している人に不快感を与えずに熱を逃がす工夫が施されている。
そして、3つ目がシステムのダウンサイジングによる可搬性の高さだ。前述の通り、MREAL X1は小型・軽量設計が施されているため、ケースに収納しての持ち運びが容易に行える。また、接続先の動作環境もモバイルワークステーションでの利用をサポートしているため、システム全体としての可搬性がより高まっている。これにより、屋内外など場所を問わず、さまざまな現場でMREALの利用が可能となる。
最後、4つ目が装着性の向上だ。MREAL X1のヘッドマウントユニットは人間工学に基づいて設計されており、快適な装着感を追求するとともに、頭を傾けるような姿勢でも安定した着け心地を実現する。また、ディスプレイ部の高さ調整機構や眼幅調整機構により、個人の頭部形状に応じた位置調整が可能。ディスプレイ部はフリップ式になっており、作業中に素早く目視に切り替えられる。
なお、意匠設計/プロダクトデザインの面でも、同じエントリーモデルのMREAL S1を踏襲し、装着している人がカッコ良く見えるデザインや操作性とのバランスを追求したという。
その他、用途に応じたアクセサリー類も充実しており、MREAL X1を両手でつかんで使用できるハンドヘルドユニット「HH-4」(別売り)や、スロット式の減光フィルター「ND-2」(同梱)、没入感と安全性を両立するアイカップ「EC-4」(同梱)などを取りそろえる。
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