3Dモノづくりで失敗しないための道具(ツール)選びのポイントとは?:テルえもんの3Dモノづくり相談所(10)(2/4 ページ)
連載「テルえもんの3Dモノづくり相談所」では、3Dモノづくりを実践する上で直面する“よくある課題”にフォーカスし、その解決策や必要な考え方などについて、筆者の経験や知見を基に詳しく解説する。第10回のテーマは「3Dモノづくりで失敗しないための道具(ツール)選び」だ。
クラウド版3Dソフトウェアの活用も視野に
ここまでは、いわゆる一般的な設計者向け“デスクトップ環境”に関する内容でしたが、最近では3D CADベンダー各社からクラウド版の3Dソフトウェアが提供されはじめており、国内外での導入事例も増えつつあるようです。
クラウド版3Dソフトウェアは、使用するハードウェア環境を問わず、いつでもどこからでも、Webブラウザ上で作業が行えるのが特長で、常に最新バージョンを使用できます。デスクトップPCやノートPCは当然のこと、タブレット端末やスマートフォンからでも利用できるというのは、非常に大きな利点といえます。加えて、クラウドの強みを生かした、関係者同士のコラボレーション作業のしやすさも特筆すべきポイントといえます。
ただし、クラウド版3Dソフトウェアの利用には、ネットワーク接続が必須となりますので、安定したネットワーク環境の整備には気を配る必要があるでしょう。
また、社内のPC環境(デスクトップ環境)の場合は、バージョン管理やライセンス管理、保守/メンテナンスなどのIT運用コストがかかってきますが、クラウド版3Dソフトウェアであれば、そうした負担から解放されます。ライセンスも期間ごとで柔軟に契約可能なサブスクリプション方式がほとんどで、導入のしやすさも大きな特長です。
Webブラウザ上で動作可能なクラウド版3D CADソフトウェアとしては、PTCの「Onshape」やダッソー・システムズの「SOLIDWORKS Cloud」などがあります。これらは、作成したデータがクラウド環境に保存されるため、ストレージ容量が多いPCを選択する必要もなくなり、データ保存用の外付けHDDや自社サーバも不要になるなど、コスト削減にもつなげられます。
完全にクラウド/Webブラウザ上で動く3D CADの他に、オートデスクの「Fusion 360」のように、専用のアプリケーションをインストールする必要があるものの、PCのスペックが必要となるレンダリングやシミュレーションの計算作業、さらにはデータ保存管理をクラウドが担う3Dソフトウェアもあります。
一方、最近では、遠隔操作でハイスペックなPCを動かしたり、VDI(仮想デスクトップ)技術を利用して3D CADをはじめとする3Dソフトウェアを動かしたりなど、コロナ禍における働き方改革の中で、リモートワークできる環境を整えようとする企業が増えてきています。
このように、これまでは「3D CAD=ハイスペックなPCが必須の時代」でしたが、クラウド版3Dソフトウェアが登場し、さらにリモートワークの流れが追い風となって、「ハイスペックなPCが必須でなくても3D CADが使える時代」になりつつあります。もちろん、これまでと同様にハイスペックなPCでの作業環境がなくなるわけではありませんが、選択肢が増えることは、設計者にとって喜ばしい変化といえるでしょう。
そして、デスクトップ環境を選択すべきか、クラウド版3Dソフトウェアを選ぶべきか、あるいはその両方を活用すべきかは、作業性、コスト、保守性、拡張性、セキュリティ、BCP(事業継続計画)、働き方改革、DX(デジタルトランスフォーメーション)など、さまざまな視点や可能性を加味した上で、自社にとってベストな選択をすべきだと考えます。
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