広がる遠隔操作ロボットの世界、川崎重工とソニー、オカムラ、ホンダなどが本格化:産業用ロボット(1/3 ページ)
慢性的な人手不足や、コロナ禍による人依存度の低減などから、製造現場でより幅広いロボットの活用が進んでいる。その中で、ロボットによる作業の内、完全自動化が難しい部分だけを人の遠隔操作で補う「遠隔操作ロボット」への取り組みが本格化しつつある。
慢性的な人手不足や、コロナ禍による人依存度の低減などから、製造現場でより幅広いロボットの活用が進んでいる。ただ、協働ロボットなどのバリエーションが広がっているものの、現在ロボットが活用できる領域はまだ限定的で、全てを自動化することは費用対効果の面でも難しい。そこで、ロボットによる作業の内、完全自動化が難しい部分だけを人の遠隔操作で補う「遠隔操作ロボット」への取り組みが本格化しつつある。
ロボットを人が遠隔操作するためには、ロボットの周辺の環境や作業する対象物などの情報を正確に遠隔地でも把握できる仕組みが必要になる。ネットワーク技術などの他、これらの情報を集約するクラウド基盤、人に正しく伝えるためのダッシュボードやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)やハプティクスなどを含むインタフェース技術などが必要だ。また、遠隔での人の操作指示をロボットに正しく伝えるための仕組みや、遅延を抑えるための仕組みなども開発が必要となる。
2022年3月に開催された「2022国際ロボット展(iREX2022)」(リアル展、東京ビッグサイト、2022年3月9〜12日)でも、遠隔操作ロボットに関連するロボットや技術基盤、サービスなどの展示が行われた。
遠隔操作ロボット基盤を展開するリモートロボティクス
iREX2022の川崎重工業(川崎重工)ブース内に出展し注目集めたのが、新たに2021年12月に活動を開始したリモートロボティクスである。リモートロボティクスは川崎重工とソニーグループがそれぞれ50%を出資して設立した「ロボットの遠隔操作」を主業務とする共同出資会社だ。川崎重工が持つ、ロボティクス技術やモビリティ技術と、ソニーグループが持つ画像処理技術やセンシング、通信技術を活用し、ロボットを遠隔地から操作する「リモートロボットプラットフォーム」の構築を目指している。
川崎重工では既に遠隔操縦型のロボットシステム「Successor」シリーズを製品化しているが、リモートロボティクスが目指しているのは、遠隔でロボットを操作するために必要な操作画面やアプリのUI(ユーザーインタフェース)、ワークフローの構築、情報の収集などの仕組みをプラットフォームとして提供し、さまざまなロボットを遠隔操作できるようにする世界だ。
具体的には、クラウド環境にロボットのリモート操作を行うアプリケーションや操作画面のUI、ワークフロー設定などの仕組みを構築し、これらとロボットを結ぶリモートロボットコントローラーなどを開発している。リモートロボットコントローラーは、ロボット制御用のPCに接続する。ロボット側PCにはリモートロボットプラットフォームの指示とロボットの動きが最適に機能するようにSDK(Software Development Kit)およびAPI(Application Programming Interface)を組み込み、調整などを行う。これらの一連の仕組みをさまざまなロボットで共通に動かせるリモートロボットプラットフォームとする。ロボットの具体的な動きについてのプログラムは、ロボットコントローラーで事前に行っておく必要がある。人の判断が必要な場合に、ロボットがどういう対象物にどういう作業を行うかを指示を遠隔で行えるようにする使い方を想定している。
既に実証では成果を生んでいる。川崎重工グループのアーステクニカ八千代工場における大型金属部品の研削、研磨の作業現場で、遠隔地から公衆回線を通じてロボットシステムに接続し、研削対象物となる大型金属部品の形状測定や研削範囲の指示を行い正しく研削を行えたという。また、川崎重工播磨工場(兵庫県)に設置されたリサイクル用ビン選別システムでの実証では、さまざまな色や形のビンが流れてくるコンベヤー上のカメラ画像から、ビンの色や重心位置を判断し、デバイス上で選別するべきビンの取り位置の指示を行い、問題なく作業ができたとしている。リモートロボティクス 代表取締役社長の田中宏和氏は「今後はパートナーとの共創を進めながら、プラットフォームの拡充を進めるとともに、さまざまな業種固有の特徴に合わせた実証を進めていく」と語っている。
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