不定期に試験を行う研究開発拠点でエネルギーマネジメント、東大と堀場製作所:脱炭素(2/2 ページ)
堀場製作所と東京大学は2022年4月5日、研究開発拠点のカーボンニュートラルの実現に向けて共同研究を行う「環境調和型エネルギーシステム社会連携講座」を開設したと発表した。
研究開発拠点はエネルギー需要を読みにくい
自動車をはじめとするさまざまな業界で、製品の使用中のCO2排出だけでなく、原料の調達や製造、廃棄、リサイクルまで全ての段階で環境負荷を低減することが求められている。オフィスや工場など定常的に稼働する施設とは異なり、研究開発拠点は非定常かつ多様な試験や実験を実施するためエネルギー需要の予測が難しく、エネルギーの使用最適化に課題がある。
堀場製作所と東京大学は、2025年までにエネルギーマネジメントシステムを事業化し、温室効果ガス(GHG)の排出を最小化した研究開発環境として、自動車など産業界に幅広く展開していく。2025年以降には、事業化したエネルギーマネジメントシステムを応用し、研究開発環境を導入する前にエネルギー利用をシミュレーションできるサイバーフィジカルシステムとして発展させる。
堀場製作所は、HORIBA BIWAKO E-HARBOR内にバッテリーや燃料電池、エンジンなどのパワートレインユニットから車両レベルまで複合的な試験を行うことができる設備「E-LAB」を持つ。E-LABの計測装置や付帯設備の計測データを一括管理するデータマネジメントシステム「STARS Enterprise」と、東京大学の予測技術を組み合わせる。これにより、設備のCO2排出量や電力使用量、発熱量などを効率的に見える化する。STARS Enterpriseに連携講座の成果をアプリケーションとして取り入れ、外販することで事業化する。
設備でエネルギーを最適利用することによって生まれる余剰電力を電力系統における調整力として活用することも念頭に、拡張性をもったエネルギーマネジメントシステムを構築する。設備稼働のエネルギー需要の予測技術の高度化や、太陽光発電の予測、エネルギー需要に合わせた蓄電や水素生成などの技術を開発する。
こうした取り組みを通じて、エネルギー消費量を最小にする実験計画の作成や設備の使用負荷に応じた供給電力の調整、コージェネレーションシステムの最適運転、設備の排熱活用などを実現する。
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