多品種少量生産への対応に向けて治具の製作も3Dプリンタで!:3Dプリンタ活用(2/3 ページ)
ストラタシス・ジャパンは、オンラインセミナー「設計製造に『軽量・堅牢』を簡単に取り入れる! 先進的な設計製造ツール『nTopology』でアディティブ・マニュファクチャリング設計(治具編)を学ぼう!」を開催。AM技術に関する豊富な経験と知識を持つ山一ハガネが、nTopologyを活用したAMによる治具の設計・製作プロセスと、そのアプローチについて紹介した。
「nTopology」の3つの強みと活用メリット
小林氏はnTopologyの強みを3つ挙げる。1つ目は、高速処理が可能で壊れないジオメトリを実現する「Implicit modeling」と呼ばれるモデリングカーネルの採用だ。一般的なB-repモデリングの3D CADの場合、点や線や面でジオメトリを構成しているが、nTopologyでは関数表現(陰関数)を用いてジオメトリを構成する。いわば数値でジオメトリを表現できるImplicit modelingは、通常のB-repモデリングで発生するような形状破綻などのエラーが発生せず、複雑なジオメトリであっても効率的かつ高速に処理できるという特長を備える。
また、高いデータ互換性も有しており、例えば主要な3D CADフォーマット(CATIA、NX、Creoなどに対応)をインポートして、Implicit modelingの形式に変換することも可能だ。これにより、普段使用している3D CAD環境で作成した部品の3Dモデルを、nTopology上で容易に取り扱うことができる。
2つ目が「Field-driven design」だ。これはデータとアルゴリズムを融合させた独自の設計手法であり、先のImplicit modelingによるジオメトリやCAEによる解析結果、実験結果などのデータを組み合わせることで、最適化された部品形状を取得できる。例えば、構造解析に基づき応力が集中している部分と集中していない部分とで、ラティスの厚さや密度をコントロールし、最適化して瞬時に部品形状に配置するといったことが可能になる。また、応力と熱といった複数の解析結果を基に、最適なラティス形状を導き出して、部品形状に反映させることもできる。
そして、3つ目が「Remixable workflows」と呼ばれるボクセルユニットを活用した繰り返し可能なワークフローだ。一度構築した設計ワークフローを再利用しながら、さまざまな部品に対して同じ条件を繰り返し適用できるもので、「治具の設計においても、Excelマクロのように、どのような条件に基づいて治具を生成するかの設計ワークフローを一度構築してしまえば、対象となる部品が別のものに代わったとしても、同じ条件を適用した治具を瞬時に作り出すことが可能だ」(小林氏)という。
さらに、nTopologyを活用することで意匠や機能の高付加価値設計が実現可能だという。例えば、シューズのソールを設計する場合、足の体圧マップを利用することで、ソール内部のラティス構造とソールのテクスチャーを最適化できる。油田用掘削ドリルであれば内部の流体路を最適化してヘッドロスの低減を図ったり、汚れを逃がしやすいサーフェスを生成したりといったことが可能である。また、金属3Dプリンタなどで造形する際に取り外しやすいサポート構造を適用したり、部品表面に画像データなどから取り込んできたテクスチャーを形状としてサーフェスに瞬時に適用したり、ラティス構造で特定の機能(例:スピーカーに適用して構造的に音を拡散させるなど)を実現したりといった高付加価値設計を幅広く活用できる。
その他、今回の主題(治具の設計・製作)から外れるため詳細は割愛されたが、nTopologyではトポロジー最適化に関する機能も有している。トポロジー最適化についても、nTopologyであれば非常に高速に処理できるとのことで、小林氏は「われわれも多くのトポロジー最適化のソフトウェアを見てきたが、これだけ高速に動くものは他にはない」と高く評価する。
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