400海里、40時間の実証航海で見えてきた無人運航の実力:船も「CASE」(3/4 ページ)
日本財団が進めている無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」と、その支援を受けて無人運航船システムの開発を進めているDFFAS Projectコンソーシアムは、2022年2月26日〜3月1日にかけて実施した無人運航船実証実験に関する記者発表会を開催し、実証実験の概要と成果について明らかにした。
無人運航システムの構成
続けて、桑原氏は今回の実証実験で用いたDFFAS Projectの無人運航システムの構成を解説した。DFFAS Projectの無人運航システムは、大きく分けて自律機能をつかさどる「船舶側システム」、陸上支援機能を網羅する「陸上側システム」、通信回線と情報管理制御を担う「通信システム」で構成される。
なお、陸上側システムは、遠隔操船機能を実装した「非常対応ブロック」と、船陸情報の収集と監視、分析、機関異常予知機能を有する「統合表示ブロック」に分かれる。説明会では「すざく」の船橋と自律機能を集約した自律機能コンテナ、陸上支援センターをネットワークでつないで、それぞれの設備をライブ映像で紹介した。
このうち、「すざく」の船橋に設置した無人運航システム関連機器は、レーダーとして通常設置されているXバンドとSバンドに加えて、5マイル程度の短距離を把握するためにミリ波レーダーを搭載した。レーダーでとらえた目標を追尾する機能では従来の手動による物標決定に加えて、自動で決定する機能(フルターゲットトラッキング機能)にも対応しているが、このとき虚像を捉えて間違った目標をプロットする恐れがある。これを防ぐために虚像を可能な限り除去する機能を新たに開発して、レーダー情報の信頼性を高めている。これらにより、無人運航システムの信頼性も向上する。
なお、無人運航システムによる操船と船橋からの有人操船は、船橋に設けたシステムのオンオフスイッチの切り替えで移行できる。
この他、無人運航システムからのコマンドで機関の回転数を制御する機器や収集している周辺情報から避航計画を立案するALSシステム、同じく海図情報や海象、周辺情報、事前にプロットした航海計画などから航海計画を立案するAPUシステム、システムの動作状況を監視、診断して信頼性が低下した時点で非常対応ブロックからの遠隔操船、船橋からの有人操船と切り替えるCIMシステムが今回の実証実験のために「すざく」の船橋には追加されていた。
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