NTT東日本がローカル5Gの価格を5分の1に、準同期対応で上り実測400Mbps超も実現:製造業IoT(2/3 ページ)
NTT東日本が2022年5月から提供を開始するローカル5Gのマネージドサービス「ギガらく5G」について説明。ローカル5G導入の最大の障壁とされてきた価格を大幅に低減しており、5年間利用する際の総コストを従来比5分の1となる2000万円に抑えた。
なぜ価格を5分の1に下げられたのか
ギガらく5Gの特徴は「導入しやすい利用料金」「キャリアグレードな機能・トータルITO」「多様なシステムラインアップ」「選べる料金プラン」「柔軟なシステムスケーラビリティ」の5つ。まず、1つ目の「導入しやすい利用料金」については、これまでの5年間で1億円という総コストと比べて約5分の1となる2000万円に抑えた。導入ケースの概算もはっきりと示しており、基地局機能である5GコアやCU、DU、バックホールと運用のためのトータルITOを含めた基本利用料が月額27万9000円、工場内でローカル5Gを運用する際に用いるインドアRUの利用料が月額2万4000円。これに、付属品となるサーバラックが64万円から、機器設置工事費などで120万円からというイニシャルコストが加わり、5年総額で約2000万円となっている。
5分の1という大幅なコスト低減は、NTT東日本のデータセンターに置いたクラウド5Gコアを共用することや、基地局ハードウェアが必要十分なスペックを維持しながら効率化できたこと、そして最もコストがかかる通信設備関連のオペレーションコストを同社のノウハウに基づき最適化したことなどで実現した。
2つ目の「キャリアグレードな機能・トータルITO」では、周波数帯4.7G〜4.9GHzのいわゆるサブ6を用いたキャリアグレードの本格的な5G SA(スタンドアロン)のローカル5Gシステムについて、マネージドサービスとして事前手続きから運用までのトータルITOをワンパッケージで提供する。これにより、免許取得やエリア設計に専門知識が必要で手間もかかるという課題を解決できる。
なお、ギガらく5Gでは、ローカル5Gの特徴の一つである準同期TDDも利用できる。通信キャリアの5Gと同じ同期TDDが下り7レイヤー上り2レイヤーであるのに対し、準同期TDDは下り4レイヤー上り4レイヤーとなっている。これによってセルスループットは、同期TDDでダウンリンク最大1488Mbpsアップリンク最大230Mbpsだが、準同期TDDの場合にはダウンリンク最大988Mbpsアップリンク最大466Mbpsになる。製造業が工場でローカル5Gを利用する際には、4Kなど高画質の映像データのアップロードを1つの基地局で多数収集したいという要望が多く、準同期TDDに対する期待は大きい。4Kカメラ1台で20M〜30Mbpsの帯域を使うことを考えると、準同期TDDのアップリンク最大466Mbpsを使えば数十台の接続が可能になるという寸法だ。
また、準同期におけるアップリンク最大466Mbpsという数値は、現時点で入手できるデバイスが2レイヤーしか利用できないという制限がかかっており、4レイヤー利用できるデバイスが登場すれば最大900Mbps以上のアップリンクも期待できるとのことだ。
3つ目の「多様なシステムラインアップ」では、工場や倉庫などの屋内向けと屋外向けの両方で、さまざまな用途に対応するためのRUやアンテナを用意している。屋内向けのインドアRUはアンテナ一体型で、送信出力は500mW。通信可能範囲は半径数十mなので、屋内でより広い範囲をカバーする場合にはインドアRUを複数使ってネットワーク設計することになる。屋外で利用するアウトドアRUの送信出力は2.5Wで、用途に合わせて5種類のアンテナと組み合わせることになる。例えば無指向型のポールアンテナであれば通信可能範囲は周辺200m程度になるが、指向性を持つアンテナを使えば数百m先まで通信を行えるという。
なお、ギガらく5Gで採用したローカル5Gシステムはサムスン製のものだが、28GHz帯のミリ波への対応を含めた顧客のさまざまな要望に対応できるように、基地局システムのラインアップも拡充させていく考えだ。
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