メタバースは視界良好、メガネ型HMD「MeganeX」が見る未来:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(20)(4/5 ページ)
「CES 2022」で話題をさらったのが、Shiftallのメタバース用HMD「MeganeX」だ。従来HMDといえば、左右がつながったボックス型を思い浮かべるところだが、まさにメガネのように左右が分離したスタイルは、多くの人に驚きをもって迎えられた。Shiftallの岩佐琢磨氏に、MeganeXの開発経緯やメタバースの未来について聞いた。
メタバース世界そのものが1個のプラットフォーム
―― MeganeXの戦場となるメタバース市場の話をお伺いします。端から見ていると、メタバースのビジネスって、Metaの「Meta Quest 2」やソニーの「PlayStation VR」のように、ハードウェアとサービスプラットフォームが一体の事業に見えてしまうんですよね。プラットフォームを持たないハードウェアでビジネスやりましょうとなったときに、みんなでさあMetaに乗っかりましょうという話でもないと思うんですが、このMeganeXはどのプラットフォームで、何をする人が対象になるんでしょうか。
岩佐 何をプラットフォームと見るかによると思うんですけど、われわれの仮説は、いわゆるメタバースアプリケーション、あるいはメタバース世界そのものが1個のプラットフォームだろうという風に見てます。
直近でわれわれはVRChatなどのメタバースアプリケーションにフォーカスしていて、これアプリじゃなくてプラットフォームだと思ってるんですけど、VRChatというプラットフォームの上にこれからいろんなサービスなり体験なりゲームなりが乗っていく。だから、VRChatをサポートできていれば、もっと言えばVRChatで動くプラットフォームの上でわれわれのヘッドセットなりボディートラッキング装置が対応していれば、それで十分と考えてますね。
―― 一方で、ホビーとしてのハードウェアを作っていくビジネスでもないんだろうなぁと。というのも、趣味性のものって飽きたら辞めるという選択肢があるわけですけど、ビジネスでやっているような、使わないと仕事にならないという分野をどう広げていくかということが課題なんだろうと思うんですよね。
岩佐 ビジネスといっても、オフィスで使う、あるいは工場で使うというような、一般の人の目に触れないB2Bで使うっていう意味のビジネスと、一般消費者であるコンシューマーに対してサービスを提供していくためのツールとして使うっていうビジネスというのは、ちょっと違ってきますよね。
例えばですが、牛丼屋に行くと券売機が置いてあります。券売機はB2Bのビジネスですけど、それを使うのはコンシューマーじゃないですか。まずメタバースの中にどんどんコンシューマーであるユーザーが集まってくるので、この人たちに対してサービスを提供していくビジネスユーザーがたくさん現れてくるはずで。その過程において、ヘッドセットにしろフルボディートラッキングシステムにしろミューティングマイクにしろ、必要になってくるだろうと僕らは見ています。
もっと具体的に言うと、VRChatだけでもめちゃくちゃ広いんで、その中で旅行代理店やろうみたいなやつが現れても不思議じゃないと。バーチャル空間で旗を持っていて、最初に新作のすごい場所があるんでご案内しましょう、みたいな。ここから歩いて行くとすごく遠いので、こっちのワープゲートから行きましょうとかって言って案内してもらう。
そのツアー、今は無料で私の友達とかが趣味でやってるんですけど、本当にメタバースに1億人の人が入ってくるような時代になると、お金を取って案内するようになるかもしれない。
僕らお客は短時間のツアーが終わったら疲れて寝るだけですけど、中のバーチャル添乗員は仕事ですから、休憩時間入れても7時間ぐらいこの中で仕事しなきゃいけない。これは小寺さんのようなライターさんが、キーボードと椅子にお金かけるのと同じで、長時間メタバースにいる人は一般の人が買うより軽く快適なもの、そういう形にどんどんなっていくんじゃないかなと思っています。
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