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使用済みリチウムイオン電池のリサイクルは今、どうなっているのか:今こそ知りたい電池のあれこれ(10)(2/3 ページ)
今回から数回にわたり、原料の再資源化(リサイクル)や電池の再利用(リユース)といった「持続可能な開発」のために希少な資源をいかに有効活用していくかといった技術や取り組みについて解説していきたいと思います。
回収された後のリチウムイオン電池の処理は?
適正な処分方法で回収されたリチウムイオン電池は、真空加熱炉などを用いて焼却し、分離精製処理をすることで金属資源の再資源化がなされます。
リチウムイオン電池の電解液は一般的に引火性液体を使用しており、回収した電池をそのまま破砕処理すると発火事故につながる恐れがあるため、事前に焼却処理をする必要があります。しかし、電解液を焼却すると有害なフッ化水素ガスが発生するため、専用の加熱炉や排ガス処理設備などが必要になります。
焼却処理された廃材は酸浸出により溶解し、溶媒抽出、電解工程などを経て金属資源が回収されます。電池メーカーでは資源の有効活用のため、正極材料に含まれる金属の情報を電池に表示する取り組みを実施しています。処理施設では、その識別表示に基づいて使用済みの電池を正極材料の種類ごとに分別して適切なリサイクル処理を行っています。
このリサイクル処理ではコバルトやニッケルといった希少な金属資源が回収される一方、電池の名前にもあるリチウムの再資源化については、現状では経済的に困難であり、スラグ(精錬廃棄物)とされる場合が多いです。
また、コバルトやニッケルといったレアメタルのリサイクルについてもあくまでも「再資源化」としての合金回収であり、回収品の純度や品質を鑑みると必ずしも「電池原料」として再利用されるわけではないという点は注意が必要です。
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