DXを推進するアステラス製薬、「人とデジタルのベストミックス」で差別化図る:製造ITニュース(3/3 ページ)
アステラス製薬はがDXに向けた取り組みを説明。同社は2021年5月に2021〜2025年度の中期計画「経営計画2021」を発表しているが、DXは達成の要の一つに位置付けられており、注力していく方針だ。
自社創成モノづくりデータマイニングシステム「DAIMON」を2018年に稼働
製造の取り組みで紹介したのが、自社創成モノづくりデータマイニングシステム「DAIMON」である。品質/生産トラブルを起こさず、より良い品質の医薬品を患者に届け続けるモノづくりの高度化を目指して、2013年に検討、2015年に開発を開始し、2018年から実装している。「スマートファクトリーやAI活用とは異なるが、先進的な取り組みだと自負している」(須田氏)という。
機能としては、工程管理や品質試験だけでなく原料特性や製造パラメータまで全てのデータの変化をモニタリングする「一変量モニタリング」の他、例えば水への溶けやすさが粒子の大きさや硬さと関連するように、研究開発段階で蓄積された既知の関係を用いる「因果・回帰関係モニタリング」を適用している。現在開発中の「多変量モニタリング」では、モデルを基に多変量の変動を効率的かつ効果的に検出し、未知の関係を見いだしてリスク予測や未然検知などが可能になるという。また、これらは主に低分子の化学物質を対象にして行われてきたが、これらのノウハウをバイオ医薬品の製造にも展開したい考えだ。
これらの他、各国・地域でさまざまな仕様で運用されていたSAPのERPについて、全社横断で統合する基幹業務プラットフォーム「Apple」では、SAPのバージョンアップとクラウド移行、グローバル統合、業界標準適合、アウトソースといった4つのフェーズに分けて進めるのが一般的なところを、1度のスキームで完了させたという。2017年から始まったこの取り組みは、2021年末時点で日米欧の3極で導入を完了し、稼働を開始している。須田氏は「全てのトランザクションがグローバルで一つにまとまるので、今後のデータ駆動型経営に活用していき」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 旭化成のDX戦略は展開期から創造期へ、全従業員4万人がデジタル人材に
旭化成がDX戦略について説明。同社は「デジタル導入期」を経て現在は「デジタル展開期」にあり、2022年度からはさらなる高度化を図る「デジタル創造期」に入る。2024年度からは全従業員のデジタル活用が当たり前にある「デジタルノーマル期」となるため、2023年度には全従業員に当たる4万人をデジタル人材に育成する方針を掲げた。 - クラウド化をためらわない協和キリン、高崎工場のDXは1年半で大きな成果
アマゾン ウェブ サービス(AWS)のオンラインユーザーイベント「AWS Summit Online」に、協和キリンが登壇。「ライフサイエンス業界の規制に対応したクラウド活用最前線」をテーマに、全社ITシステムのクラウド化推進や、主力の高崎工場におけるデジタル化プロジェクトの成果について報告した。 - 帝人は日立との「情報武装化」でマテリアルズインフォマティクスを加速する
帝人が、新素材の研究開発におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けて、日立製作所との協創を始める。帝人と日立は今回の協創をどのように進めていこうとしているのか。両社の担当者に聞いた。 - 中外製薬がデジタル創薬でAWS採用、社外との研究連携基盤構築コストが10分の1に
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)と中外製薬は、同社の全社データ利活用基盤「CSI」がAWSのクラウド基盤を採用したと発表。中外製薬は2020年末までに、革新的新薬の創出を目指す社外研究者との100件の研究プロジェクトの運用に向けてCSI上に研究開発環境を整備する計画である。 - アステラス製薬が無菌製剤製造ラインを新設、モダリティ製剤にも対応可能
アステラス製薬は、焼津技術センター内に新設する無菌製剤製造ラインの着工を発表した。今後の新しいモダリティ製剤にも対応可能な新施設により製造能力を向上し、製品を安定供給できる体制を確立する。 - AIは万能ではない――インシリコ創薬が目指す未来
製薬・IT企業・研究機関がタッグを組んで、創薬に関わるAIを一気に開発しようとする取り組みが進められている。「どんな薬をつくればよいかと問えば、対象疾患から副作用、治験の方法まで教えてくれる」のが目指す究極の姿だ。