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AIは万能ではない――インシリコ創薬が目指す未来人工知能ニュース(1/3 ページ)

製薬・IT企業・研究機関がタッグを組んで、創薬に関わるAIを一気に開発しようとする取り組みが進められている。「どんな薬をつくればよいかと問えば、対象疾患から副作用、治験の方法まで教えてくれる」のが目指す究極の姿だ。

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 産学連携コンソーシアムである「ライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)」は、製薬、化学、食品、医療、ヘルスケアといったライフサイエンス分野のためのAI(人工知能)やビッグデータ技術の開発に取り組む。ライフサイエンス分野における産業振興や、国民の健康寿命の延伸と生活の質の向上を目指している。

 同コンソーシアムの代表を務める、京都大学大学院医学研究科教授の奥野恭史氏は、ライフサイエンスの分野において、「AIさえあれば全てが解決するわけではないが、おそらく産業革命に匹敵する産業シフトが起こるだろう」と述べる。

※)本稿は、都内で開催されたヴァイナスによるユーザーイベント「VINAS Users Conference 2017」(2017年10月12日)の基調講演において、京都大学大学院医学研究科教授の奥野恭史氏が「AI創薬の現状と可能性」のタイトルで講演した内容を取り上げています。

創薬は絵画を描くことと同じはず

 奥野氏が示したのが、図1の画像である。これはAI(人工知能)を活用して描かれた17世紀の画家レンブラントの“新作”だ。レンブラントが生前に残した油絵346点を元にディープラーニングによって特徴を学習。それを元に、レンブラントの作風を持ちながら、全く新しい絵画を生み出した。


図1:AIが絵画の主題や構図、服装の特徴などを学習し、レンブラントの新作を描いた。油絵の凹凸も再現するために3Dスキャナー、3Dプリンタが活用された。(出典:京都大学大学院)

 「AIがレンブラントの新作を描けるのなら、同様に新しい薬もAIによって作ることができるのでは考えるのも自然な流れといえる」(奥野氏)。

 創薬は一般的に目的の病気を引き起こしているタンパク質を見つけるところから始まる。次にそのタンパク質の働きを制御できるような化合物の探索を行う。候補となる化合物は、動物を使った試験や臨床試験などの後、承認を経て上市される。また販売後も引き続き新たな副作用や適性薬価などの調査が行われる。

 通常、新薬の開発にかかる時間は10年以上にもなり、それに掛かる金額は平均で1200億円になるといわれる。そのため、インシリコ創薬(「シリコンの中で」、つまりコンピュータを活用した候補化合物の検討)への取り組みが盛んになっている。こういった流れの中で、創薬を中心としたライフサイエンスに関連するAIやビッグデータ技術を一気に開発しようと2016年12月に立ち上げられたのが、奥野氏が代表を務めるLINCである。LINCは製薬を中心とするライフサイエンス企業およびIT企業、大学、研究機関80以上が参加する。

 LINCでは、未病・先制医療から分子設計、臨床など、医薬品開発に関連するプロセス全域をカバーする。またAIおよびビッグデータ技術開発のための基盤整備を含み、合計約30のプロジェクトが並走して一気に進められている(図2)。


図2:医薬品の開発プロセスと、それにかかわるライフインテリジェンスコンソーシアムのワーキンググループ。(出典:京都大学大学院)
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