「設備保全」の5つの方式は機能や使用条件に合ったものを選択すべし:生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(2)(4/4 ページ)
工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第2回は、「設備保全」の5つの方式ついて解説する。
2.設備保全の組織
設備保全は大変重要ですが、これを運営する保全担当部門の組織については、工場規模の大小、生産方式の違いなどによって一概にはこうあるべきとはいえません。しかし、一般的には次のように行うのが良いとされています。
- 保全部門は生産(製造)部門に含めず、同格の別部門とすること、特に自働化の進んだ工場ほど、この方式が望ましいとされている
- 保全部門は1カ所にまとめること、各部門に保全部門を配置してしまうと保全要員、経費、運営の面でムダな経費や業務のダブルワークが発生するので、余り芳しくない
- 新たに機械設備を導入する際に、改良保全、保全予防を推進するために保全部門の意見が十分取り入れられる組織でなければならない
このような考え方に基づく設備保全の組織を「集中保全」といいます。集中保全による組織の長所と短所を以下の表3に示します。
長所 | 短所 | |
---|---|---|
①機動性が高い ②人員配置の柔軟性 ③労働力の有効利用 ④設備保全用設備や工具の有効利用 ⑤設備保全員の技能向上の有利性 ⑥設備保全技術者育成の有利性 ⑦設備保全費用の統制の確実性 ⑧設備保全に関する責任の明確化 |
①設備運転者との一体感が弱い ②現場の監督業務との情報共有が困難 ③設備保全作業に伴う現場往復時間が大きい ④設備保全作業の日程調整が難しい ⑤特定設備に対する知識や技能の習熟に若干の困難性がある |
|
表3 集中保全の長所と短所 |
◇ ◇ ◇ ◇
機械設備は使用者の立場からいえば、ある期間の前提として与えられている条件下で故障もなしに規定の機能を果たしてほしいという期待があります。そのために、機械設備の事故や故障をできるだけ早期に摘出し、あるいは防止するために故障モードを明らかにして、その影響の解析をして改善し(FMEA:Failure Mode and Effects Analysis)、発生が好ましくない事象については、論理記号により発生経過の樹形図(故障の木、FT:Fault Tree)が用いられます。
このFTは、解析対象であるシステムに起こり得る特定の事象(通例は起こっては困る事象で、故障や事故、異常、危険状態など)を最上位(頂上事象)に置き、これを発生させる原因事象に展開する手法です。
この樹形図を描き、故障の原因や確率を解析する(FTA:Fault Tree Analysis)、さらには、設備の将来の状態を予測する機械設備診断技術(Machine Condition Diagnosis Technology)があります。なお、技術進歩による新鋭設備の出現で、これまでの機械設備の性能が陳腐化しています。新しい機械設備への切り替えには、投資経済性を根拠とした設備投資計画が必要になってきます。
筆者紹介
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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