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「設備保全」の5つの方式は機能や使用条件に合ったものを選択すべし生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(2)(3/4 ページ)

工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第2回は、「設備保全」の5つの方式ついて解説する。

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1.7 全社的生産保全(TPM:Total Productive Maintenance)

 TPMは日本独特の保全方式で「全員参加の生産保全」の略称です。

(1)生産部門におけるTPMの定義

 TPMは次のように定義されます。

  • 機械設備の効率を最高度にすることを目標として、
  • 機械設備の一生涯を対象としたトータルシステムを確立し、
  • 機械設備の計画部門、使用部門、保全部門などの工場のあらゆる部門にわたって、
  • トップから第一線の作業オペレーターに至るまでの全員が参加し、
  • 動機づけ管理、すなわち小集団活動によってPMを推進すること

(2)TPMの目的

 TPM活動の目的は、「設備の効率=設備が生み出す利益÷設備に費やす総費用」で示される設備効率を最大にすることです。

(3)5Sと6大ロス

 「自分の機械設備は自分で守る」という、“自主保全(体制)”の定着を推進するため、まずは表1のいわゆる「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ・習慣)」を徹底し、“探すゼロ”の実現により生産効率の向上を目指します。

5S 説明 着眼点
整理 いる物といらない物を分けて、いらない物を捨てる 身の回りに使わない物はないか:
「赤札作戦」
整 頓 いる物を使いやすいように置き、誰でも分かるように明示する 物の置き方の標準化:
「看板作戦」
清 掃 常に掃除をして、キレイにする 清掃は点検の始まり(清掃点検)
清 潔 けがや病気がないよう衛生的にする 整理、整頓、清掃の維持
しつけ 決めたことを守る習慣を身に付ける 自主的全員参加のルールづくり
表1 5S「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ(習慣)」

 そして、表2で示した、TPMで掲げる機械設備の効率化を阻害する6つのロス「6大ロス(突発事故、段取り・調整、立ち上がり・歩留まり、工程不良、速度低下、空転・チョコ停ロス)」を排除し、機械設備の効率を最高度の状態にしていくために、改善を進めます。その結果として、企業の業績向上の実現、明るい職場づくりをめざし、企業の体質改善をしようとするのがTPMです。

6大ロス 説明
①突発事故ロス 効率化を阻害している最大の要因は突発事故による故障停止ロスであるが、故障には突発的に発生する機能停止型の故障と、設備の機能が本来の機能よりも落ちてくる機能低下型の故障がある
②段取りロス、調整ロス 段取りや次の製品の加工開始までの準備時間などにより発生する停止ロスと、試し加工による調整ロスがあるが、中でも調整をゼロにし、良品が確実にできるようにしなければならない
③立ち上がりロス、歩留まりロス 始業時の生産立ち上がり時や段取り換え時の試し加工に伴って発生するロスのことで、立ち上がりロスの最小化には、熱変化などの実態を測定し、自動補正を行うなどの対策が必要である
④工程不良ロス 工程中に不良のため廃棄される物量ロスと、不良品などの手直しによる工数ロスがあるが、中でも慢性不良は原因が複合化しているため、PM分析の考え方を取り入れて対策を行うと良い
⑤速度低下ロス 基準速度よりスローダウンして運転するために発生するロスのことで、対策は、基準スピードに上げて、真の原因を把握する、現状のサイクル線図を測定し、それを分析することがポイントである
⑥空転ロス、チョコ停ロス 一時的なトラブルで機械設備が停止または空転するために発生するロスのことで、対策としては、現象をよく見て、微欠陥の是正や最適条件を把握することが改善のポイントである
表2 6大ロス

1.8 予知保全(PM:Predictive Maintenance)

 予知保全は、機械設備の劣化状況や性能の低下状態を診断し、その診断情報をもとに保全活動を展開する方法です。予防保全が時間を軸に計画するのに対して、予知保全は、設備の状態を軸にして計画するという点が大きく異なります。予知保全は、機械設備の状態センシング技術(検出技術)と、機械設備の点検情報システムの支援が前提となります。

 各企業では、将来的には保全コストの削減を強く望んでいるという現状があります。このための対応策として、改良保全や設備診断技術の適用による予知保全に力を入れるということになりますが、特に設備診断技術の習得には苦労しているというのがほとんどの企業の現実です。調査結果でも、設備診断技術が未熟という回答が高い割合になっています。また、同様に高い割合で、機械設備の保全員の人材不足や、教育が不十分という回答も挙げられています。そのため、ここでも保全教育と合わせて、保全作業の標準化や保全業務の機械化を進めるべきという課題が見えてきます。

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