ローコード開発が、環境変化に対応しやすく陳腐化しにくい基幹システムを作る:製造業DXが生む3つの価値(4)(2/2 ページ)
製造業でも多くの関心が寄せられている「DX」。本連載では、DX基盤を構築したその先で、具体的に「何が実現できるのか」を紹介する。最終回のテーマは「ビジネス環境への対応」だ。現場ニーズに即しつつ、ソースコードに極力手を加えずに基幹システムの追加機能を開発する上で、「ローコード開発」の意義に注目したい。
「陳腐化しないシステム」を実現するローコード開発環境
では、陳腐化することのない「新しいシステム像」とはどのようなものなのでしょうか。「陳腐化しない」ということは、「常に最新プログラムを運用している」状態だと言い換えられます。そして、最新プログラムを常時運用するには、定期的にバージョンアップを実施することが不可欠です。
これを可能とするのが、クラウドERPに備わる「ローコード開発環境」です。
ローコードの開発環境として代表的なものには、Salesforce Platformの「Flow」、マイクロソフトのAzureによる「Power Platform」などがあります。ローコード開発は、ソースコードを直接触ることなく既存機能の変更、追加ができるのが最大の利点です。追加機能開発を行ってもオリジナルのソースコードが変化しないため、常にシステムバージョンアップが可能な運用環境となります。
また、ローコード開発ツールはユーザーフレンドリーなUI(ユーザーインタフェース)設計を採用していることも多くあります。このため、従来、システムを導入したITベンダーしか手を加えられず、ブラックボックス化していた追加機能開発が、ユーザー主体で実施しやすい環境になっているのです。もちろんそれなりに開発の仕方を学ぶ必要はありますが、実質的に追加機能開発を内製化できるため、外注のコストを削減できる、ユーザー利益に合致した仕組みと言えます。
念のため追記しますが、「追加機能の開発をローコード開発だけで、全てユーザー側で行える」ということを言いたいわけではありません。また、その真偽自体もここでの論点ではありません。
中長期的な視点でシステム運用で発生し得る現場要求を素早く吸い上げ、社内で速やかに対応できる。これが、ローコード開発の最大の価値といえるでしょう。
5年、10年先でも最新プログラムを運用できるように
今後もビジネス環境の変化は継続的に発生します。クラウドERPに代表されるクラウドアプリケーションは、そうした環境下でも5年後でも10年後でも最新プログラムでのシステム運用を可能にするのです。基幹システム導入に際しては、定性的&定量的な投資効果測定をするのが通例となっていますが、導入以降、ずっと最新プログラムを運用し続けられるというROI(投資対効果)を上回ることはなかなか難しいのではないでしょうか。
製造業向けDXをテーマにした本連載も、今回がいったんの最終回となります。DXと言う言葉がいつまでバズり続けるかは分かりません。しかし、仮にDXという言葉が廃れても、その言葉が意味する変革の意義自体は今後も変わらず産業界で求められ続けるはずです。求められる変革の内容は、時代に合わせて変わってゆくでしょうが。
実際のところ、国内製造業の多くにとってDXはこれから取り組んでいく領域と言えます。また、近い将来、別のユニークな観点からDX戦略をお話しする機会がくるかもしれません。また、MONOistでお会いしましょう。
筆者紹介
栗田 巧(くりた たくみ)
Rootstock Japan株式会社代表取締役
経歴
1995年 マレーシアにてDATA COLLECTION SYSTEMSグループ起業。タイ、日本、中国に現地法人設立
製造業向けERP「ProductionMaster」とMES「InventoryMaster」リリース
2011年 アスプローバとの合弁会社Asprova Asia設立
2017年 DATA COLLECTION SYSTEMSグループをパナソニックグループに売却。パナソニックFSインテグレーションシステムズ(株)代表取締役就任
2020年 Cloud ERPのリーディングカンパニーであるRootstock Japan(株)代表取締役就任
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