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人は何かに体当たりしなければ、変わることはできない凡人エンジニアが経営コンサルタントに生まれ変わるまで(6)

ある大手メーカーのエンジニアが、さまざまな紆余(うよ)曲折を経て、新たなキャリアとして経営コンサルタントになるまでのいきさつを描く本連載。第6回は、コンサルティング研修プロジェクトチームに参加した時に直面した2つの課題と、それらにどのように向き合ったかについて紹介する。

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 コンサルティング研修プロジェクトチームに参加した私は、2つの問題に直面しました。「“エンジニアリングとコンサルティングの距離感”問題」と、「“桑山って誰だよ”問題」です。1つ目の問題の解決法は比較的シンプルでした。距離感があろうがなかろうが、まずは受け入れる。それが、私が実践した解決法です。

⇒連載「凡人エンジニアが経営コンサルタントに生まれ変わるまで」のバックナンバー

 コンサルティング研修の講師を務めていただいた斎藤顕一氏は、コンサル業界では知らない人のいない一流のプロフェッショナルです。その人の言葉によちよち歩きの私たちが「距離感」を持つなどというのはそもそもおこがましい話で、まずは素直に全ての教えを受け入れてみるのが今やるべきことだと私は考えました。

 当時から、私は自分の一番の強さは「素直さ」だと思っていました。エンジニアとしてのプライドが強過ぎると、「この人は技術や現場のことが分かっていない」とつい考えてしまいますが、私は一度腹を決めてしまえば、言われたことを全て吸収することができました。私は役職などないも同然の立場ですし、リーマンショック後のどん底も体験していました。プライドなど持ちようもなかったのです。

 素直な心で斎藤氏の言葉に耳を傾けてみて、私はこれまでのバリューチェーン・イノベーター(VI)の問題点が分かってきました。簡単に言えば、「全体最適」の視点がなかったのです。それまでのVIは、現場の部分的な問題を部分的に1つ1つ解決していくというスタンスでした。つまり「部分最適」だったのです。しかし、本当に必要なのはクライアント企業全体の問題をまず把握して、それを部分的に解決していくという方法です。そのためには、会社の財務状況を把握したり、さまざまな部門の方々に話を聞いたりする必要があることを理解しました。

「13人中13番目」のメンバーとして

 もう1つの「“桑山って誰だよ”問題」の解決にはある程度の時間が必要でした。13人からなる研修チームは、社運を背負った先鋭部隊と見なされていたので、社内のさまざまな部門からそうそうたるメンバーが招集されました。私を除いては……。

 2つあった事業部のトップ、部長クラス、各技術・ビジネス分野のエキスパート。それらがチームに招集された人たちでした。私はエレクトロニクス分野の専門家として選ばれたのですが、社内でもよく知られたメンバーの中にあって、私だけがまったくの無名でした。年度初めの全社員を集めた朝礼でチームメンバーが発表されたのですが、私が紹介されたときに会場がざわついたのを覚えています。「誰だよ、桑山って」というざわつきです。

 コンサルティングを学ぶに当たっては私が誰であろうが関係ありませんが、チームに課せられたミッションを遂行する際には大きな壁となりました。チームのミッションは3つ、すなわち、「VIを推進して成果を上げること」「社内啓発活動」「コンサルティングのノウハウの内製化」です。総じて言えば、自分たちが学んだコンサルティングの方法を、「VIのエヴァンジェリスト」として社内に伝道し、事業の成功につなげるのがチームの役割だったわけです。

 エヴァンジェリストですから、全国の事業所を回って、部長クラスの社員にVIの戦略を浸透させ、売り上げに結び付けていかなければなりません。しかし、私が地方の事業所に足を運んだときの反応は、決まって「一体、誰だ?」でした。本社から知らないやつがいきなり訪ねてきて、付け焼き刃のコンサルの知識をひけらかしている、くらいに捉えられていたのです。

 会社としてはそれでは困るということで、私を社内報で紹介してくれたり、事業部の飲み会に呼んでくれたりして、知名度を上げるサポートをしてくれました。私の名前がようやく社内に浸透してきたと感じたのは、1年くらいが経過してからでした。

 しかし、「13人中13番目」だったことは、私にとってよかったと思っています。実績もないまま厳しい環境に投げ込まれ、必死に学び、必死にミッションを遂行する中で、自分が成長し、自分のマインドが変わっていくことを私は感じました。1年間の研修が終わった時点で「選抜チームの中で一番伸びた人」に選んでいただけたのも、「13番目」であることを自覚して、わき目もふらずに努力したからだと思います。

 人は何かに体当たりしなければ、変わることはできない。どれだけ教育や研究のプログラムが充実していても、「経験」がなければ人は成長できない──。そのとき、私はそう強く感じたのです。

筆者プロフィール

桑山和彦(Modis株式会社 コンサルティング事業部 事業部長)

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通信機器メーカー勤務後、リーマンショックを機に株式会社VSN(現Modis株式会社)に転職。入社後はエレクトロニクスエンジニアとして半導体のデジタル回路設計やカメラ用SDK開発業務に携わる。2013年より“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」を推進するメンバー「バリューチェーン・イノベーター・プロフェッショナル」に抜てき。多くの企業で現場視点と経営視点の両面を併せ持った問題解決事案に携わる。現在は、全社的にVIサービスを推進するコンサルティング事業部の事業部長として、企業のバリューチェーン強化、DX推進、人事組織開発について実践的なコンサルティングサービスを推進。Modisのコンサルティング領域拡大をリードしている。

Modis https://www.modis.co.jp/

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