パナソニックが磁界を使う近距離無線通信技術を開発、ワイヤレス給電との併用も:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
パナソニックが磁界を用いた新たな近距離無線通信技術「PaWalet Link」を開発。通信方式としてOFDM(直交周波数分割多重方式)の一種である「Wavelet OFDM」を適用しループアンテナを利用することで通信範囲を数mm〜数十cmに制限可能であり、有線通信やワイヤレス給電と組み合わせたハイブリッドなシステムも容易に構築できる。
EV向けの磁界共鳴式ワイヤレス給電の充電制御に最適
PaWalet Linkは、技術のベースが有線通信であるIEEE 1901であることから、1つのICで有線と無線のハイブリッド端末を構築できる。さらに、通信にループアンテナによる磁界を用いるので、同じくループアンテナを使う磁界共鳴式のワイヤレス給電技術との併用にも適してる。
EVのワイヤレス給電では、充電スタンドから車載電池に充電を行う際には細やかな制御が求められるためデータ通信を行う必要があるといわれている。実際に、有線でのEVへの急速充電ではCANやPLCを用いた通信を行っている。PaWalet Linkであれば、ワイヤレス給電用のループアンテナ内に通信用のループアンテナを設置するだけで充電制御のための通信が可能になる。送電コイルと充電スタンド間の通信をPaWalet Linkに担わせることも考えられる。
電動キックボードのワイヤレス給電ステーションも同様のコンセプトになるが、多数の充電ポイントを有線のPaWalet Linkでつなぎつつ、それぞれの充電ポイント間で干渉が起こらないように通信距離を設定するなどの工夫を加えられる。
電動キックボードのワイヤレス給電ステーションにおける「PaWalet Link」の活用イメージ。HD-PLCの高速通信モジュールとしてシキノハイテックが販売している「P-TMFSU-031」を利用してシステムを構築できるという[クリックで拡大] 出所:パナソニック
なお、PaWalet Linkは、海中や水中における無線通信への適用も検討されている。「低めの周波数を利用することで水中で距離数mの無線通信が可能になる。主に、太陽光発電システムや洋上風力発電システムを介した沿岸での海中通信を想定している」(古賀氏)という。現在、パナソニックは九州工業大学とともに、NICT(情報通信研究機構)の「Beyond 5G 研究開発促進事業 令和3年度新規委託研究」の一般課題として、「海中・水中IoTにおける無線通信技術の研究開発」に採択されており、海中や水中でのPaWalet Linkの適用実証はその中で進めることになる。
関連記事
- EV向けワイヤレス給電、実用化の最終段階へ!
先般、EV(電気自動車)用充電インフラに関して重要な出来事があった。ワイヤレス給電はこれまで米国のベンチャー企業であるWiTricityと、半導体大手のQualcommが激しい国際標準化争いを続けてきた。しかし、WiTricityがQualcommのEV向けワイヤレス給電事業「Qualcomm Halo」を買収することとなったのである。これにより、標準化争いは終止符が打たれるものの、すぐに実用化に移れるのだろうか。 - ワイヤレス給電市場は2030年に2700億円、EVが成長の余地大きい、AGVも堅調
矢野経済研究所は2020年5月28日、ワイヤレス給電の受電モジュールや受電機器を対象とした市場調査結果を発表した。2030年に市場規模が2019年比7割増の2739億円に拡大する見通しだ。 - 高まるUWBによる位置検出需要、村田製作所は民生機器と産業機器の両面で対応
村田製作所は、「CEATEC 2021 ONLINE」において、位置検知向けに市場が拡大しているUWBモジュールを展示した。民生機器向けの「Type2BP」と産業機器向けの「Type2AB」をそろえており、2020年末の量産を目指し開発を加速している。 - 産業向けで導入進む「HD-PLC」、通信の困りごとを解決する“第3の道”を目指す
パナソニックは電力線を通信線として利用する「HD-PLC」技術を利用した事業の拡大を進めている。HD-PLC事業の取り組みについて紹介する。 - 電力線だけじゃないHD-PLCの可能性、新規格発行でIoT向けに浸透するか
パナソニックは、電力線通信であるPLCの最新国際標準規格であるIEEE 1901-2020に準拠した技術や機能を搭載したICの設計に用いる「HD-PLC4 IPコア」のライセンス供与を開始した。高速化や長距離化を実現するとともに、電力線にとどまらない制御線や同軸線などの既設のさまざまなメタル線も活用できることなどを特徴としている。 - HD-PLC改めIoT PLCは住空間のCANを目指す、パナソニックが普及に本腰
パナソニックが技術開発に注力している電力線通信(PLC)の事業展開について説明。これまでHD-PLC(高速電力線通信)として推進してきたが、2019年3月のIEEE 1901aとしての国際標準化を受けて、IEEEでの呼称である「IoT PLC」に改めた上で展開を拡大する方針だ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.