工場の生産を止めるネットワークトラブル、PFUが「見える化装置」で未然に防止:FAニュース(2/2 ページ)
PFUは、工場内で増加の一途をたどるネットワーク接続機器の見える化やネットワークの状態把握を簡単に行える装置「iNetSec FC」を発表した。ネットワークに接続するだけで機器とネットワーク構成を自動で見える化する機能が最大の特徴であることから、同社は「ネットワーク見える化装置」と名付けている。
25年間のネットワーク製品の技術やノウハウを生かして工場の悩みを解決
PFUは、1996年から社会インフラや金融基盤で利用される最先端の技術を搭載した高品質のネットワーク機器を開発してきた実績を持つ。伴仲氏は「石川工場で起きたトラブルの話を聞いたときに、25年間のネットワーク製品を手掛けてきた技術やノウハウを生かして工場の悩みを解決できないかと考え、開発したのが今回のiNetSec FCになる」と強調する。
iNetSec FCの特徴は大まかに分けて3つある。1つ目は「機器とネットワーク構成を自動で見える化」である。iNetSec FCをネットワークに接続するだけで、そのネットワークにつながっている機器を自動で検出、識別してくれるのだ。特許出願中の「エッジ・アナライズテクノロジー 2.0」により、IPアドレスを持たないため検出そのものが難しいスイッチングハブも検出できるので、トラブル発生時の影響範囲を見える化して、生産ラインの復旧までの時間を短縮できる。また、接続機器の一覧だけでなく、どの機器がどのネットワークに接続しているのかが一目で分かる、ネットワーク構成の見える化も自動で行う。
2つ目は「トラブルを未然に防止し対処を迅速化」だ。ネットワークの負荷(使っている帯域)や品質(転送エラー数)を見える化することで、転送性能低下や機器故障のトラブルリスクをあらかじめ把握し、トラブルを未然に防ぐことができる。また、最大1週間分の過去状況を確認できるので、トラブル発生時の状態の把握による原因特定の迅速化も可能だ。これらのデータはCSV形式で出力して保存できるので、1週間以前の状況についても確認できる。
また、iNetSec FCは、機器の状態を常に監視しており、トラブルが発生した場合にどの機器が原因になっているのかを画面ですぐに確認できる。ネットワーク構成の見える化と同様に、ネットワークの専門知識がなくても直観的に理解できる表示になっており、トラブルが発生している機器や影響範囲を一目で確認できるという。
そして3つ目の特徴が「生産設備に影響を与えず安心」である。生産技術部門の担当者がIT向けのネットワーク管理製品を導入しない理由の一つに、生産ラインの稼働に影響を与える可能のあるパケット送信を行う「アクティブ検知」を使うことが挙げられる。そこで、iNetSec FCは、機器検出時にパケット送信を行わない「パッシブ検知」でも機器検出を行えるようにした。パッシブ検知は、取得できる情報が限られるものの、通常時のネットワークの状態管理に利用するのであれば十分だ。また、より詳細な情報を把握したいときのためにアクティブ検知も行えるようになっている。
なお、オフィス向けのセキュリティ対策アプライアンスとして2017年に発売した「iNetSec SF」向けに、このパッシブ検知の機能が初めて開発された。先述のエッジ・アナライズテクノロジー 2.0に対して、バージョン1.0に当たる「エッジ・アナライズテクノロジー」がパッシブ検知になる。
これらの見える化情報は、iNetSec FCと接続するWindows PC/サーバにインストールしたマネージャーソフトウェアで表示や管理などが行える。UIは全てWebブラウザベースで、マネージャーをインストールしたPC/サーバと連携すれば電子アンドンなどにネットワークの接続状況などを表示するといった応用も可能。なお、1つのマネージャーでは、1万台までの機器、100台までのiNetSec FC、100までの登録セグメントを管理できる。iNetSec FC1台では、3000台までの機器と、3までの登録セグメント(タグVLAN時は32セグメントまで)を管理可能だ。
伴仲氏は「これまで当社のネットワーク機器はIT向けということでセキュリティ対策とセットになることが多かったが、今回のiNetSec FCは工場のネットワークの見える化に的を絞って商品化しており、セキュリティに関する機能は組み込んでいない。価格も50万円未満という戦略的な価格に設定し、工場の生産技術部門の方にとって使いやすい製品になっている」と強調する。なお、iNetSec FCの事業目標は発売から3年後で年間売上高10億円を計画している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- スマート工場化を進めるのは現場の専門家? それともデジタル技術の専門家?
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第11回では、スマートファクトリー化を進める上で必要な現場の体制作りの考え方について紹介します。 - スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。 - PFUの組み込みコンピュータがステンレス筐体採用、半導体製造装置向けに
PFUは小型組み込みコンピュータの新モデル「AR2100モデル120N/AR2200モデル120N」を発表。エッジIoT端末向けにLANを4ポートに増やし、半導体製造装置向けに錆やウィスカが出にくいステンレスを筐体に採用。併せて、4Kや8Kなどより高精細化が求められる専用モニターとの接続が必要な医療機器向けにDisplayPortを搭載した。 - 1.5Gの振動を加えても70℃でも安定動作する耐環境コントローラ、PFUが披露
PFUは、「ET&IoT Technology 2019(ET2019)」において、半屋外、車両、粉じんや有害ガス環境などの過酷な環境でも安定して動作する「耐環境コントローラ」を参考展示した。 - 組み込みコンピュータとEtherCATカードに加えソフトも、PFUがパッケージ提案
PFUは、「産業オープンネット展2019 東京」に初出展し、組み込みコンピュータとEtherCATカード、OS、SDK(ソフトウェア開発キット)などをパッケージにした提案を紹介した。 - 4台の組み込みコンピュータを1台に統合できる、PFUが仮想化ソフトウェアを発売
PFUは、同社の組み込みコンピュータ「ARシリーズ」向けのソフトウェア製品となる「組込み仮想化ソフトウェア」の販売を開始すると発表した。