スマート工場化を進めるのは現場の専門家? それともデジタル技術の専門家?:いまさら聞けないスマートファクトリー(11)(1/3 ページ)
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第11回では、スマートファクトリー化を進める上で必要な現場の体制作りの考え方について紹介します。
スマートファクトリー化は製造業にとって大きな関心事であるにもかかわらず、なかなか成果が出ない課題を抱えています。本連載では、スマートファクトリーでなかなか成果が出ないために活動を縮小する動きに危機感を持ち、より多くの製造業が成果を得られるように、考え方を整理し分かりやすく紹介してきています。第11回となる今回は、スマートファクトリー化を進める中で多くの製造業が頭を悩ませる現場の体制作りについて考えていきます。
本連載の趣旨
本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」とし、スマートファクトリーで成果がなかなか出ない要因を解き明かし、少しでも多くの製造業がスマートファクトリー化で成果が出せるように、考え方や情報を整理してお伝えする場としたいと考えています。単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じてご紹介します。
架空企業の背景
従業員300人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「第4次産業革命を進める」と指示され途方に暮れます。そこで、第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺い、さまざまな課題をクリアしていきます。
本連載の登場人物
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回のあらすじ
さて、前回のおさらいです。第10回の「スマート化で露呈する工場のサイバー攻撃への弱さ、安定稼働を守るための考え方」では、スマートファクトリー化を進めれば進めるほど危険性が高まるサイバー攻撃に対し、工場でのセキュリティ対策の必要性と現実的な取り組みについてお伝えしました。
スマートファクトリー化は先進のデジタル技術を活用することで、生産活動の効率化や付加価値向上を進める動きです。デジタル技術活用の前提として、オープン化された技術の活用やネットワークの活用など、ソフトウェアベースの動きが求められますが、これらが前提となれば、ネットワークを通じてソフトウェアベースのさまざまな機器制御を攻撃するようなことが可能となります。
スマート工場化を進めれば、ネットワークを使って工場内の情報を閲覧できたり、制御できたりするわよね。そうなるとサイバー攻撃でこれらのデータを奪われたり改ざんされたりする可能性は当然出てくるわ。つまり、スマート工場化を進める中では必須だといえるのよ。
従来の工場ではこうした「前提」がなかったために攻撃を受けませんでしたが、工場もこうしたネットワークでつながる世界に入りつつあるために攻撃対象となってきているというわけです。
ただ、工場の担当者にサイバーセキュリティ対策の全てに対応するということは難しいことです。それに対して印出さんはスモールスタートで「優先順位を決めて進める」ということを示していました。
セキュリティに関することだけではないけれど、「止まったら困るところ」「情報がもれては困るところ」から対策していくことかしらね。
また、土台とする国際標準やガイドラインなども参考にすることを提案していましたね。
既にIEC 62443シリーズなど制御システムセキュリティに関する国際標準化も進んでいて、さまざまなガイドラインなども出ているわ。全体像としてはこうしたガイドラインを参考にしつつ、個々には重要性の高いところから進めるというのが現実的なところではないかしら。
さて、今回はスマートファクトリー化を進める中で多くの製造現場が頭を悩ませる現場の人員面での体制作りについて考えていきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.