“クラウドネイティブ”なERPは製造業に何をもたらすのか:製造業DXが生む3つの価値(3)(2/2 ページ)
製造業でも多くの関心が寄せられている「DX」。本連載では、DX基盤を構築したその先で、具体的に「何が実現できるのか」を紹介する。今回のテーマは「クラウドERP」だ。定義や海外ベンダーらの市況を紹介する。
業務変化に応じた速やかなシステム設計を実現
5.最新プログラムでのシステム運用
従来のオンプレミス型ERP製品において、機能変更や追加機能開発を行う場合は、カスタマイズやアドオンと呼ばれるソースコードをコーディングする手法が一般的でした。結果、ユーザーごとに異なるソースコードが出来上がり、定期的なバージョンアップの阻害要因になっていました。
一方、クラウドERPは、プラットフォーマーが提供するローコード開発環境によって、ソースコードに触ることなく、機能変更や追加機能の開発ができます。結果、定期的なバージョンアップを実行し、常に最新プログラムでシステム運用を行うことも可能です。これにより、ビジネス環境変化に応じて、新たな業務要件に対応したシステム設計や運用を速やかに行えます。
6.モビリティ活用
インターネットを通じて、PCだけでなく、スマートフォン、タブレット端末からでも「いつでも・どこでも」必要に応じてクラウドERPにアクセス可能です。モビリティによって業務設計の自由度が高まり、社内リソースの有効活用、業務効率の向上を実現できます。
7.社内コミュニケーション促進
プラットフォーマーが提供するワークフローやチャットを有効活用することで、部門間でのコミュニケーションを活性化できます。社内コミュニケーションの促進は顧客コミュニケーションの強化と同義であり、顧客満足度向上につながります。ちなみにワークフロー設定や運用は従来のERP製品では弱い機能領域でしたが、クラウドERPでは自由度の高いワークフロー運用を行えます。
8.エコシステム構築
プラットフォーマーが提供する有償、無償のアプリケーション、ツールを活用することで単一プラットフォーマー上で完結するエコシステムを構築できます。
例えば、一般的な製造業向けERPの機能領域外にあるCRM、PLM/CAD、品質管理システム、人事管理・勤怠管理システムを組み合わせたエコシステム構築が考えられます。有名なところでは、セールスフォースが提供する「AppExchange」があります。国内外で5000個を超えるCloudアプリケーションが用意されており、自社に必要なアプリケーションを選択して、サブスクリプション形式で利用することが可能です。
クラウドERPがデファクトスタンダードになる日
今回はいかがでしたでしょうか? この数年で国内と海外のERP市場は規模に大きな差が生まれつつあります。特に大きな違いはクラウドERPへの取り組みではないでしょうか。
今はまだオンプレミス型製品への国内需要があるのかもしれません。が、かつての携帯電話機市場のように、気が付いたら国内ERP市場がガラパゴス化していた、といった事態が生じることが危惧されます。ユーザー側の視点から見ると、間違いなく「ベネフィット(利益)」をより多く享受できるのがクラウドERPです。クラウドERPがERPのデファクトスタンダードとなる日は意外と近いかも知れません。
第4回となる次回のテーマは「ビジネス環境対応」です。お楽しみにどうぞ。
筆者紹介
栗田 巧(くりた たくみ)
Rootstock Japan株式会社代表取締役
経歴
1995年 マレーシアにてDATA COLLECTION SYSTEMSグループ起業。タイ、日本、中国に現地法人設立
製造業向けERP「ProductionMaster」とMES「InventoryMaster」リリース
2011年 アスプローバとの合弁会社Asprova Asia設立
2017年 DATA COLLECTION SYSTEMSグループをパナソニックグループに売却。パナソニックFSインテグレーションシステムズ(株)代表取締役就任
2020年 Cloud ERPのリーディングカンパニーであるRootstock Japan(株)代表取締役就任
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