コロナ禍で進んだ「リモート工場」、何ができて何ができないのか:いまさら聞けないスマートファクトリー(13)(3/4 ページ)
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。第13回では、コロナ禍で注目度が高まった生産のリモート対応について解説していきます。
工場でもWeb会議システムの導入を
「リモートで」といっても何がやりたいかによるわよ。やりたいことによって必要な技術や施策も変わってくるもの。
まだ、全く形になっていないので、どういう使い方でうまくいっている場合があるかを知りたいですね。
そうね。すごくシンプルなものだと、製造現場とその他の関係者をWeb会議でつなぐというものかしら。まさに現場にいるかのように話をしながら、現場の問題箇所を見せて、進めていくという形ね。
なるほど。通信環境とかカメラの問題はありそうですが、それは簡単にできそうです。
オフィスでのリモートワークと同様に、工場内ともWeb会議システムをつなぐことで、現地に行かなくても解決できることは数多くあります。それなりに大きな規模の企業では、設計担当者や生産技術担当者は各工場から離れているところにいる場合も多く、課題や問題がはっきりしていたり、現場担当者へのアドバイスだけで解決できたりする問題は、リモートコミュニケーションの仕組みを整えるだけで現地に行くのと同等の効果を得られる場合も多いと考えます。
一方で、この仕組みだけでは解決が難しいのが、現場ではすぐに原因の分からない不具合や生産性の低下など「問題の要因特定が必要な場合」です。その場合は、現場の担当者の認識している情報だけでは、要因が特定できません。従来はさまざまな知見を持つ担当者が現場に集まり、生産ラインや機械の状況、加工品質などを見ながら、問題の要因を探り当て、根治に導くわけですが、こうした仕組みをリモートで代替する必要があります。
リモート化において重要な「見える化」の役割
そこでスマートファクトリー化でも第一歩として語られる「見える化」が重要になります。機械の稼働情報や品質検査の情報などをIoT(モノのインターネット)などを通じて、データとして収集しそれを共有する情報基盤をリモートで担当者が閲覧し、これらのデータからの知見とWeb会議での現場担当者とのコミュニケーションで解決を目指すという仕組みです。
通常、現場で不具合解決のために見ているものや感じているものが、何を根拠としているのかを確認することが大事ね。そのデータを共有する仕組みが構築できれば、要因特定もリモートで行える部分も増やしていけるわ。
これらを実現するためには、機械で必要な情報を取得するためのセンサーや、ラインの動きや作業の様子、人手による組み立ての様子を把握するためのカメラなどの新たな設置が工場現場では必要になります。また、データの収集、情報共有の仕組みなどもシステムとして構築する必要があります。
一から構築すると大変そうですが、スマートファクトリー化の中で「見える化」を進めているのであれば、その仕組みをそのままリモートコミュニケーションにおける情報の土台とすればよさそうですね。
そうね。最近では「見える化」を進める中で、組み立て工場でもプロセス製造業と同様に工場の稼働情報やワークの品質情報を一元管理する中央制御室やコックピットのような役割を設置するところも増えているし、その制御室をそのままリモート化するイメージかしら。
ちょっと大変そうだけど、イメージは湧きました。
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