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オートデスクが「Forgeプラットフォーム」を軸にオープンスタンダードを主導Autodesk University 2021(1/2 ページ)

Autodesk主催のデジタルカンファレンス「Autodesk University 2021」のゼネラルセッションにおいて、同社 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏は、クラウドベース開発プラットフォーム「Forge」のさらなる進化、活用の方向性とその価値について説明した。

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 Autodesk(オートデスク)主催のデジタルカンファレンス「Autodesk University 2021」(会期:2021年10月5〜14日)のゼネラルセッション(Part1、Part2)において、同社 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト(Andrew Anagnost)氏は、クラウドベース開発プラットフォーム「Forge」(以下、Forgeプラットフォーム)のさらなる進化、活用の方向性とその価値について説明した。

将来的に製品ポートフォリオ全体の機能をForgeプラットフォームへ

 冒頭、アナグノスト氏は、withコロナの時代に突入しようとする今、「人々は通常の業務に戻りつつあるが、働き方そのものはコロナ禍以前の元の状態に戻ることはない」とし、クラウドを活用したデータの保存と共同作業はさらに増えていくとの見解を示した。また、同時に大量のファイルの書き出しやアップロード、共有そのものよりも、「貴重なデータを含む“ファイルへのアクセスのしやすさ”がより一層望まれるようになる」(同氏)と指摘する。

Autodesk 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト(Andrew Anagnost)氏
Autodesk 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト(Andrew Anagnost)氏

 そうした状況を踏まえ、現在同社が注力しているのが、Forgeプラットフォーム活用の強化だ。「われわれは、Forgeプラットフォームが提供する価値をさらに拡大し、クラウドへのアクセスのしやすさや、拡張可能でオープンなデータフローを提供することによって、エコシステム全体を1つにつなげて、経営層から製造現場まで、全ての関係者が連携できるデータフローの実現を目指す」(アナグノスト氏)。

 Forgeプラットフォームは、開発者に対して、クラウド内の設計データやエンジニアリングデータにアクセスできるAPI(Application Programming Interface)やサービスを提供することで、あらゆるプロセスをつなぎ、ワークフローを自動化し、価値あるインサイト(洞察)を引き出すことが可能な枠組みの構築を支援する。同社は、この開発基盤ともいえるForgeプラットフォームを活用することで、その価値と可能性を大きく拡大しようとしている。

Forgeプラットフォームにより開発者はクラウド上の設計データやエンジニアリングデータにアクセスできる
Forgeプラットフォームにより開発者はクラウド上の設計データやエンジニアリングデータにアクセスできる[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 Forgeプラットフォームの活用によって、業界や使用しているソフトウェア、場所などを問わず、データへのアクセス性、拡張性、オープン性を高めることができるという。これにより、「人々はその才能を発揮でき、プロセスを連携させ、ワークフローを自動化し、価値あるインサイトを引き出すことが可能となる。こうした環境がビジネスに役立つ」とアナグノスト氏は強調する。そして、そのためには、個々のソフトウェアとしてではなく、ソリューションとしてそれらがプロジェクトの完遂に向けてどのように役立つかという視点が重要だとし、「ソフトウェアだけでなく、プラットフォーム開発にも注力してきた」(アナグノスト氏)という。

Forgeプラットフォームによりプロセスをつなげワークフローを自動化して価値あるインサイトを引き出す
Forgeプラットフォームによりプロセスをつなげワークフローを自動化して価値あるインサイトを引き出す[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 アナグノスト氏は「将来的には、当社の製品(ソフトウェア)ポートフォリオ全体の機能をコンポーネント化して、共通のForgeプラットフォームに展開することで、その機能が個々の製品の枠を超えて利用可能になる。多数の単体製品を提供する代わりに、単一プラットフォーム上であらゆる顧客のワークフローを支援することができる」と、Forgeプラットフォームを活用した戦略の方向性について説明する。

将来的には、製品ポートフォリオ全体の機能をコンポーネント化して、Forgeプラットフォームに展開する
将来的には、製品ポートフォリオ全体の機能をコンポーネント化して、Forgeプラットフォームに展開する[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 Forgeプラットフォームは、全てのプロジェクト関係者が利用する単一のプラットフォームとなり、そこに全プロジェクトのデータが集約され、データへのアクセスや検索、管理、あるいは解析といったことが容易に行えるようになる。このプラットフォーム上では、価値の源泉であるデータが、どのソフトウェアで作成されたか、どんなファイル形式かということは問題ではなく、同社のソフトウェアはもちろんのこと、他社ソフトウェアとの間でもスムーズにデータのやりとりができ、個々に応じた適切な粒度でのデータ活用が可能になるという。

 「Forgeプラットフォームによるこうした枠組みが構築されることで、オートデスクが提供する価値が根本的にシフトすることになる。複数のソフトウェアを使用する/行き来する必要はなくなり、単一環境であらゆるプロジェクト、あらゆるパートナーとの共同作業が柔軟に行える。設計と製造が単一環境で作業を進められ、経営層から製造現場まで、全ての関係者が同じプロジェクトデータにアクセスしたり、利用したりできる」(アナグノスト氏)

設計と製造を単一環境で行い関係者全員が同じプロジェクトデータを共有できる
設計と製造を単一環境で行い関係者全員が同じプロジェクトデータを共有できる[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 また、この戦略によって、同社の単体製品(個々のソフトウェア)がなくなるわけではなく、むしろ、単体製品はこれまで以上に重要になるという。その理由について、アナグノスト氏は「現在、ある単体ソフトウェアに搭載されている機能が、今後はForgeプラットフォームに展開され、さまざまなワークフローで利用可能になるかもしれない。そういう意味で、単体製品の存在は引き続き重要となる」と語る。

 現在、あらゆる業界でオープンなソリューションが求められており、オートデスク自身、そうした業界の枠を超えた“オープンスタンダード”を主導すべきだと考え、Forgeプラットフォームを軸とする戦略強化を推し進めている。

 そのビジョンについて、アナグノスト氏は「当社が目指すのは、製造業、建築/建設業、メディア&エンターテインメントなど、あらゆる業界やプラットフォームの垣根を超えた相互運用性、一貫性、セキュリティを実現するオープンスタンダードだ。これは決して簡単なことではない。われわれにとっての長期的なビジョンといえる。当社の全ソフトウェア製品の機能を1つのプラットフォームに集約し、業界に最適な環境を構築するには時間が必要だ。この取り組みは大きな変化であり、オートデスクの在り方もさらに進化していくことになるだろう」と説明する。

 そして、アナグノスト氏は2021年9月にブランドイメージを一新し、ロゴやブランドカラーを見直した件を引き合いに出し、「当社は見た目だけでなく、活動そのものも変化していくことを目指している。顧客の進化をただ待つのではなく、それを積極的にサポートし、あらゆるイノベーターを力付けることができる、そんな存在を目指していく」と、同社自身の変革に向けた決意を述べた。

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