3D CADで設計変更していたらエラーが発生して先に進めない!?:テルえもんの3Dモノづくり相談所(4)(3/3 ページ)
連載「テルえもんの3Dモノづくり相談所」では、3Dモノづくりを実践する上で直面する“よくある課題”にフォーカスし、その解決策や必要な考え方などについて、筆者の経験や知見を基に詳しく解説する。第4回のテーマは「3D CADで設計変更している際にエラーが発生してしまう原因と対処法」だ。
アセンブリ、図面におけるエラー
ここまでは、主にモデリングに関するエラーについて紹介してきましたが、アセンブリ、図面におけるエラーにも触れておきます。
一般的な3D CADの場合、アセンブリや図面はモデリングした3Dモデルとリンク関係にあり、3Dモデルの形状が変更されるとアセンブリや図面も更新されます。そのため、3Dモデルにエラーが発生してしまうと、アセンブリと図面にもエラーが発生してしまいます。これが3D CADで設計を進めていく上で、とても厄介なところで、設計業務の時間ロスとなる部分です。
(C)アセンブリのエラー
例5:構成部品の読み込みエラー
読み込むはずの部品のデータが保管されている読み込み先や、ファイル名が何らかの理由で変わってしまうと、読み込みエラーが生じることがあります。エラーを修正する方法としては、読み込み先、あるいはファイル名を再定義します。3D CADでアセンブリを行う場合には、きちんとしたデータ管理が必要で、場合によってはデータ管理ソフトを別オプションで購入するなどして、適切に運用することが求められます。
例6:参照関係が崩れている
部品と部品を組み合わせる際に、参照している面や線(エッジ)、点などの要素がなくなってしまうと、参照関係が崩れてしまいエラーが起きてしまいます。この場合、参照している要素を再定義する必要があります。
(D)図面のエラー
例7:寸法エラー
寸法を付ける際、参照していた要素が3Dモデルの設計変更によって、なくなってしまった場合にエラーが起きてしまいます。寸法が不要になった場合には削除、または別の箇所へ再定義します。
例8:部品の読み込みエラー
アセンブリと同様に、読み込むはずの部品のデータが保管されている読み込み先や、ファイル名が何らかの理由で変わってしまうと、図面で参照している部品が読み込めずにエラーが起きることがあります。エラーを修正するには、読み込み先、あるいはファイル名を再定義します。
エラーへの対処やエラー発生の低減もやはり「経験」
設計業務において設計変更は付き物であり、その作業中に直面する、3D CADでのエラーもまた付き物です。要するに、うまく付き合っていくしかないのです。
筆者自身もかつて、設計変更に伴う3D CAD上でのエラーに直面し、夜中まで残業していた……という苦い思い出があります。ただ、経験を積んでいくことで、エラー原因を特定するスピードも上がっていきますし、同時にモデリングのスキルも向上していきますので、エラーそのものも減ってくるはずです。
苦労するケースとしては、自分ではなく、他人が作成したデータに対する設計変更です。その場合、作業履歴の解読から行う必要があるのですが、やみくもに手を付けてしまうと、どこのフィーチャの値を変更すれば、形状が変わるのかが分からず、ただ時間だけが過ぎていきます。このあたりは、作成ルールを社内で規定したり、3D CADのパラメータ機能をうまく活用したりすることで、解消できることもあります。
今回紹介したことを基本的な考え方として理解を深め、エラーが起きにくいモデリングにつなげていただければと思います。今後の連載の中で、設計変更でエラーが起きにくい形状の作成方法や、ノンヒストリーベース、ダイレクトモデリング機能などについても紹介していく予定です。お楽しみに! (次回へ続く)
筆者プロフィール
テルえもん/本名:小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 設計者の働き方が変わる!? デジファブ技術が設計業務にもたらすインパクト
3Dプリンタや3Dスキャナ、3D CADやCGツールなど、より手軽に安価に利用できるようになってきたデジタルファブリケーション技術に着目し、本格的な設計業務の中で、これらをどのように活用すべきかを提示する連載。デジファブ技術を活用した新たなモノづくりの視点や働き方、業務改革のヒントを製造業の設計現場視点で考察していく。 - 脱2次元できない、3次元化が進まない現場から聞こえる3つの「ない」
“脱2次元”できない現場を対象に、どのようなシーンで3D CADが活用できるのか、3次元設計環境をうまく活用することでどのような現場革新が図れるのか、そのメリットや効果を解説し、3次元の設計環境とうまく付き合っていくためのヒントを提示します。 - 3D CAD選びで失敗しないために知っておきたい“6つ”のポイント
3D CADソフトの選定を行う際、皆さんはどのような基準で評価を行っているだろうか。本連載では、3D CADをどのようなポイントで選べばよいか? さまざまな3D CADソフトや機能を紹介しながら、レーダーチャートでその特性や機能性を評価する。連載第1回では、3D CAD活用のメリットをおさらいすると同時に、3D CADソフトを評価する上で基準となる6つのポイントを取り上げる。 - 設計改革とは何なのか
機械メーカーで3次元CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は設計改革について考える。 - 【トラブル1】試作がそのまま使えない!? 3Dプリンタと量産金型の違い
量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その原因と解決アプローチについて解説する連載。第1回は、3Dプリンタで試作した製品を量産しようとした際、そのままでは金型に展開できず設計の見直しを余儀なくされた……というトラブルだ。問題の原因はどこか? その解決アプローチとは? - 3次元データ形式とツールの関係を考える
あなたはどうしてソリッドモデラーを使うのか、考えたことはある? もしかしてサーフェスモデラーでもいいのかも!?