電動車100%へ330億円を投資した日産・栃木工場、開発中の燃料電池は定置用で活躍:電気自動車(3/4 ページ)
日産自動車は2021年10月8日、330億円を投資して栃木工場(栃木県上三川町)に導入した次世代の自動車生産の取り組み「ニッサンインテリジェントファクトリー」を公開した。日産自動車 執行役副社長の坂本秀行氏は「複雑かつ高度なクルマをつくるための、変動に強い生産現場と生産技術は明日の日産の飛躍の要になる」と生産領域に投資する重要性を語る。
同じく作業中に負荷の高い姿勢となるヘッドライニングの組み付けもロボットを導入した。身体的な負担が大きいだけでなく、コネクテッド化などでヘッドライニングは重量が増えている。ロボットは、ヘッドライニングのクリップが挿入できた際の挙動を力覚センサーで検出し、人の手と同様に正確に組み付けることができる。熟練作業者の感覚をロボットに“移植”することで実現している。2人がかりで車内での作業が必要だったコックピットモジュールの組み付けもロボットで自動化した。リアルタイムにボディー寸法を計測して最適な中心点を算出することで、±0.05mmの精度で位置を補正。熟練作業者の組み付けを再現した。
この他の工程でも熟練作業者と同等の正確さやノウハウを生かした自動化を実現した。例えば、塗装の外観検査はトレーニングを積んだ作業者の場合、直径0.3mmのごみの検出率は95%だが、塗装品質検査システムでは、専用の照明を当てるロボットと画像認識カメラの組み合わせにより直径0.3mmのごみの検出率を100%に高めた。また、同様に検査員の集中力に頼っていた仕様検査も自動化し、56項目にわたる細かな仕様の確認まで行う。
アリアで初採用の磁石レスモーターも栃木工場で生産
アリアで初採用となる磁石レスローターの駆動用モーターも、栃木工場で生産する。界磁ローターの巻き線をはじめ、コアの投入やメインの組み立て、車両工程への搬送など多くの工程を自動化した。
磁石レス界磁モーターを車載用で量産するのは「世界初」(日産自動車)で、ルノーと日産が開発段階から共同で行った。磁石は高速回転中に磁力が抵抗になるが、巻き線コイルの発生磁力制御によって高速走行中の効率を高められるというメリットがある。
界磁ローターは8極からなる。径が1.2mm、全長350mの銅線を118周巻き上げる必要があり、8極合計で944周の巻き上げを20分間で完了できたことで量産が実現した。銅線を傷つけずにボビンから送り出しながら、隙間なく緻密に巻き上げられるよう、ノズルを制御するのがカギとなる。コイルを巻き上げる設備は、設備メーカーと協力して開発した。
新型モーターの組み立てラインでは、デジタル技術を活用して品質やラインを管理している。設備の稼働状況を見守り、異常時に記録するドライブレコーダーのようなカメラの他、現場帳票のデジタル化、品質管理情報や不良情報のリアルタイムでの見える化などを取り入れた。
このラインの作業者が効率的に作業内容を学習できるよう、MR(複合現実)表示に対応したゴーグルで、扱う部品の3Dモデルを見せながら指導を行う。作業者は、MRゴーグルで作業内容の指示や作業箇所を確認しながら単独で学習できる。監督者は作業者の学習内容を作業者の視点からチェックすることが可能だ。
習熟期間は従来比で半減して5日間に、指導工数は90%減の1時間まで短縮した。作業ガイドのコンテンツはPowerPointの作成作業と同等の簡単さだという。作業者を増員したときに効果を発揮しそうだ。
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