熱とノイズの検証時間を90%減、モデルベース開発向けシミュレーション技術:車載ソフトウェア
東芝デバイス&ストレージは、モデルベース開発時に、車載半導体のシミュレーション時間を短縮する技術「Accu-ROM」を開発した。同社の従来技術に比べて、車載半導体の動作検証時間を約10分の1に短縮する。
東芝デバイス&ストレージは2021年9月21日、モデルベース開発(MBD)において、車載半導体のシミュレーション時間を短縮する技術「Accu-ROM(Accurate Reduced-Order Modeling:精度保持縮退モデリング)」を開発したと発表した。同社の従来技術に比べ、車載半導体の動作検証時間を約10分の1に短縮する。
Accu-ROMでは、ミリ秒単位で動作するメカ機構の動作をまず検証し、そのモデルを簡素化した後に、マイクロ秒単位で動作する半導体の動作を計算する。従来はこの2つを同じ時間間隔でシミュレーションしていたため、動作速度の差からメカ機構で無駄な計算が発生していたが、効率的なシミュレーションが可能になった。
また、半導体の計算では、熱やEMIノイズなど車載機器で重要となる指標に限定したVHDL-AMSモデルをSPICEモデルから自動生成し、シミュレーションに組み込む。これにより、従来は100種類以上のパラメーターを使って計算していたSPICEモデルよりも計算時間を短縮している。
同技術を利用することで、これまで32時間51分かかった車載半導体の熱とEMIノイズのシミュレーションを、3時間27分で完了できた。
モデルベース開発は、ハードウェアを試作する前にソフトウェアの仮想環境上でシミュレーションし、開発と検証を同時進行できる効率的な開発手法だ。一方で、計算時間が増大するという問題があった。今回開発した技術により、半導体を用いた機器の動作を迅速に評価可能になるため、車載機器の開発と設計時間削減に貢献する。さらに今後は、車載機器のほか、産業機器や家電の開発にも展開していくという。
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