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誰のためのモデルベース開発?モデルベース開発奮戦ちう(12)(1/5 ページ)

モデルベース開発の新人教育を無事に終え、既に社内で経歴を積んだ技術者向けの社内教育を始めることになった京子たち基盤強化チーム。そこで、部門間の壁という大きな課題に突き当たることに。モデルベース開発を導入するのは、一体誰のためなのか。最終回の今回も難問続出。最後に京子が見せた涙の意味は?

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前回のあらすじ

モデルベース開発奮戦ちう

 全社のモデルベース開発におけるライセンス管理やデータマネジメント、そして教育を目的とした基盤強化チームに選ばれた京子。まずは、最大の課題と感じていた、モデルベース開発を知ってもらうための教育カリキュラム作りに取り組むことになった……(前回の記事へ)。


「モデルベース開発奮戦ちう」の主な登場人物
「モデルベース開発奮戦ちう」の主な登場人物(クリックで拡大)

新人教育から社内教育へ

 社内教育の要員として、モデルベース開発課から選ばれたのは、大島さんと私だった。新人教育で活躍した、LEGOを用いた教材が活躍中である。

 受講希望者は、各部署から若手社員を2人ずつ募り、計10人の規模になった。

 山田課長からの全体説明に続き、基盤強化チームで策定した社内教育カリキュラムに沿って、PCの画面の中でモデルが組立てられていった。

 数値を入力してボタンを押せば結果が出ることに、受講者たちは感動している。

 見回っていた大島さんが、ある受講者の画面にくぎ付けになっていた。どうも意図しない解析結果が描画されているようなのだ。

大島

(受講者に何と言って声を掛けたら良いものか?)


 教育カリキュラムとしてはこの後、コード生成を行ってから、コントロールモデルをLEGOに転送する工程に進むのだが、このままでは正常に進めない。

 ようやく、受講者自身が不自然さに気付いた。

あれ? 教育カリキュラムに従って作業を進めただけなのに、どうしてみんなと違うんだろう?


 大島さんがモデルを確認する。

大島

(プラントモデルの物理特性の選択ミスだけであれば、短時間で修正できる……。ここか!)


 プラントモデルを修正し、再度解析を実行してもらう。

やっと他の人と同じになった。どこが問題だったんですか?


大島

プラントモデルの三次元マップBのY軸に、三次元マップAのY軸を選択していたことが要因でした。


それってプラントモデル側の問題ですよね? 制御モデル側には何の問題もないんですよね?


京子

(でも、プラントモデルの設定を間違えていたことは問題じゃないのかな……)


 大島さんも引っ掛かりを感じているようだ。

 そんな、そこはかとなく気まずい空気を察してか、受講者の部署の教育担当者が声を掛けてきた。

どうかしましたか?


モデルを組み立て、解析を実行し、結果を表示することができました。


 受講者は答えを受けて、その教育担当者は満足そうだ。

そうですか、そうですか、これで一人前ですね。


大島

受講者の方の、担当業務を教えてください。


彼は、制御のスペシャリストです。受講の目的は、プラントモデルと連携するための環境を手に入れることなんです。プラントモデルが意図しない動きをするのは、私達の責任ではありません。プラントモデルは、適正なものをきちんと提供して頂ければ、それで良いので。


 という教育担当者の回答。大島さんは、

大島

では、実機を触った経験はあるのでしょうか?


 そうすると受講者自身が答えた。

私は、制御を極めたいと考えています。実機には興味がありません。


京子

担当以外のことは、どうだって関係無いということですか?


 私が考えているモデルベース開発の活用法と懸け離れた考え方がショックで、思わず声を荒げてしまった。

 山田課長が私の両肩に手を掛けて、小声で制止する。

山田課長

今日はやめておきましょう。


 その後、教育カリキュラムの全てのメニューを消化し、定刻にもなったので、クロージング。

山田課長

第一回目の社内教育ということもあり、不慣れな点などがあり申し訳ありませんでした。持ち帰って、次回に役立てさせて頂きます。本日は有難うございました。


 会場の後片付けを終えて、私たちは自席に戻った。

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