誰のためのモデルベース開発?:モデルベース開発奮戦ちう(12)(2/5 ページ)
モデルベース開発の新人教育を無事に終え、既に社内で経歴を積んだ技術者向けの社内教育を始めることになった京子たち基盤強化チーム。そこで、部門間の壁という大きな課題に突き当たることに。モデルベース開発を導入するのは、一体誰のためなのか。最終回の今回も難問続出。最後に京子が見せた涙の意味は?
課題1:制御を極めることが目的だから、実機に興味が無い
大島くん、初回の社内教育の講師、御苦労さまでした。京子ちゃんもいろいろとありがとう。それじゃ早速、反省会を始めましょう。
山田課長の招集を受けて、基盤強化チームのメンバーが集まった。大島さんが進行係になって、今回の社内教育の概略を説明した後に反省会が始まった。
議題になったのは、あの受講者の言葉だ。
- 制御を極めることが目的だから、実機に興味が無い
- 教育を受講した目的は、プラントモデルと連携する環境を手に入れること
- 適正なプラントモデルを提供して頂ければ良い
最初に、「制御を極めることが目的だから、実機に興味が無い」から行こう。どう思う?
こんなのって、モデルベース開発じゃあない!
自分さえ良ければ、他人はどうでもいいって感じだよな。
ダメダメ。この反省会の目的を忘れないで。今後どうすればより良い社内教育ができるかを話し合うことなんだから。
場の空気が変わり、メンバーから意見が出始める。
制御を極めるためには、制御対象のメカニズムや物理特性を、ある程度は知っておく必要があるよね?
ちょっと待ってください。そもそも制御屋さんの仕事の目的って何なんですか?
プラントモデルを手掛けた経験がある五十嵐さんが聞く。
ハードウェアが持っているポテンシャルを最大限に引出すこと。意図しない動きをハードウェアにさせないこと。
モデルベース開発の啓発活動で頑張っていたころを、思い出してちょうだい。
皆からも意見が挙がる。
伝え方に工夫が必要だよね。伝える側の思いだけでは、受け入れてはもらえない。
LEGOを使った教材じゃ不十分ってことですか……。
なだめるように意見が挙がる。
モデルベース開発の入り口として、全体像をお手軽に体験してもらう教材として、LEGOは素晴らしい教材に仕上がっていると思うよ。
さらに深く共感してもらうために、実務に即した事例などを用意することも考えた方が良いのかな。
今回の受講者の人たちは、どのようにモデルを使おうとしているんでしょうか? 制御プログラム単体のエラーの有無だけを、お手軽にチェックする環境が欲しかっただけなんでしょうか?
モデルベース開発という手法の必要性と価値を、正しく伝えられていなかったんだな……。
話の流れが次の項目につながりましたね。
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