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「人口減による経済停滞」は本当か? 自己実現型停滞から脱するために必要なもの「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(8)(4/5 ページ)

苦境が目立つ日本経済の中で、中小製造業はどのような役割を果たすのか――。「ファクト」を基に、中小製造業の生きる道を探す本連載。第8回は、日本の製造業にとっての大きな課題とされている「人口減少」について、ファクトを共有していきます。

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人口変化と経済成長の関係とは

 日本をはじめ、成長期の多くの国では、人口の増加に伴って経済が成長し、生活が豊かになっていくという循環がありました。しかし、今後多くの国で直面するのは、人口が減ったり、生産年齢人口の比率が下がったりしていく中で、どのように「一人一人の生活を豊かにしていくか」ということではないでしょうか。

 もちろん、経済規模(GDP)は、人口と極めて強い相関があります。特に1人当たりの生産性の近い先進国においては、人口とGDPがほぼ比例する関係となっています。

 まずは人口とGDPの相関性について確認してみましょう。図6がOECD各国とBRICsにおける人口とGDPの相関図(バブルチャート)です。横軸に人口、縦軸にGDPとしています。両軸とも対数表記としていて、バブルの大きさは各国の1人当たりGDPを表しています。

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図6 各国の人口とGDPの相関図(クリックで拡大)出典:「OECD統計データ」を基に筆者が作成

 当然ですが、人口と経済規模(GDP)は強い相関があることが分かります。基本的には人口が多いほど経済規模が大きいことになります。日本はこの中では5番目に人口が多く、3番目に経済規模(GDP)が大きい国です。

 しかし、ここまでさまざまなファクトを通じて本連載で述べてきた通り、「経済規模が大きいこと」と「国民一人一人が豊かであること」とは必ずしも一致しません。国民の豊かさは「1人当たりGDP」などの1人当たりの指標で表されるべきです。

 そして、今まで見てきた通り、1人当たりGDPは平均給与や労働生産性と強い相関があります。つまり、「1人当たりGDP」が大きければ「平均給与」や「労働生産性」も高い水準にあるということになります。

 図6を見て分かる通り、どの領域にも「1人当たりGDP(=バブルの大きさ)」が大きい国も小さい国も存在します。つまり、「1人当たりGDP」と「人口」や「経済規模」には「明確な相関がない」ことが分かります。

 それでは、よくいわれるような「人口が増加するほど経済は成長する」という点について検証してみましょう。図7はOECD各国の人口の増減率(横軸)と1人当たりGDP成長率(縦軸)の相関図です。バブルの大きさは2018年の1人当たりGDPの大きさを表します。数値はいずれも1997年から2018年の変化率としています。

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図7 人口増減率と1人当たりGDP成長率の相関図(クリックで拡大)出典:「OECD統計データ」を基に筆者が作成

 日本は人口も1人当たりGDPもほぼ変化がありません。ドイツは人口の変化がほぼありませんが、1人当たりGDPは2倍近くに成長しています。リトアニア、ラトビア、エストニア、ハンガリー、ポーランドなどは、人口が停滞または減少しているにもかかわらず大きく経済成長しています。

 このグラフを見て、どのように解釈するかは非常に難しいですね。一方で、これらの国と日本を外れ値として除外すれば、人口の増加率と1人当たりGDPの成長率は緩やかな正の相関(青い点線)があるようにも見えますね。

 「人口が増加すると経済成長しやすい」ということはこの図からも見て取ることができます。しかし、「人口が減っても経済成長している国がある」ということも同時に表現されているように捉えています。つまり、人口が減る社会においても、国民一人一人が豊かになれる方法というのは存在するということです。

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