デンソーテンが軽量エッジAIを開発、自社製品への搭載に加え外販も:人工知能ニュース
デンソーテンがドライブレコーダーなどカメラを搭載する組み込み機器のSoC(System on Chip)上でリアルタイムに画像認識を行える軽量かつ高性能なエッジAI技術を開発した。0.5TOPS程度の処理性能を持つSoCで、高性能コンピュータに用いられるGPU向けAIに匹敵する性能を実現できるという。
デンソーテンは2021年9月28日、ドライブレコーダーなどカメラを搭載する組み込み機器のSoC(System on Chip)上でリアルタイムに画像認識を行える軽量かつ高性能なエッジAI(人工知能)技術を開発したと発表した。0.5TOPS(1TOPSは1秒間に1兆回命令を処理する能力)程度の処理性能を持つSoCで、高性能コンピュータに用いられるGPU向けAIに匹敵する性能を実現できるという。新開発のエッジAI技術は同社の製品に搭載するとともに、収集画像の個人情報保護(例:映り込んでいる人の顔をマスク)、車両や歩行者による通行量の把握、防犯カメラでの侵入検知、店舗内カメラによる来店客の移動軌跡の検出など、車載以外の用途に向けたAI学習済みモデル(ソフトウェア)の外販にも取り組む方針だ。
今回開発したエッジAI技術は、大まかに分けて2つの特徴がある。1つは「超軽量」で、一般的な深層学習ベースの推論アルゴリズムと比べて、SoCの処理性能やメモリ量を抑えつつ十分な精度の画像認識を実現できる。さまざまな大学や研究機関、企業などで開発されている高性能の画像認識AIから、車載機向けのベースとなるAIを選定し、性能確保のために残すべき部分を特定。そうでない部分を簡単な演算に置き換えることでAIモデルの演算量とメモリ量の削減を図った。実際に、高性能PC向けのGPUなどで実行される代表的なAIである「Darknet53+Yolov3」と比較して、60分の1以下の演算量と32分の1以下のメモリ量で同等の認識性能を実現したという。
もう1つの特徴はモデル生成効率化技術だ。深層学習に基づくAI開発の課題として、大量の教師データの作成に手間がかかるとともに、AIモデルの作成でも専門技術者のノウハウが求められる点が挙げられる。新開発のエッジAI技術では、教師データの作成にかかる手作業を一部自動化しており、経験豊富な技術者の手作業と比較して教師データ作成の時間を20%削減できる。さらに、デンソーテンのAI技術者が保有するノウハウをソフトウェア化することで、性能の良いモデルを作るための設定値(学習用パラメータ)を特定する工程も自動化した。これにより、AI技術者がいなくてもAI技術者が作成したモデルと同等性能のモデルを短期間かつ自動で生成することが可能になる。
データ収集コストを削減し効率の良いデータ収集を実現
デンソーテンは、2005年にタクシー向けドライブレコーダーを発売し、2015年にはクラウドセンターと連携して走行中の膨大な記録データの中から危険と判断された画像だけをリアルタイムに確認できる「クラウド連携ドライブレコーダー」を商品化するなど、データ収集が重要な役割を果たす車載機を開発してきた。
これらのカメラを搭載する車載機は、コネクテッドカーの普及に伴ってデータ活用が多様化、高度化している。例えば、ドライブレコーダーが収集する画像データに対する需要が増え、それをクラウドセンターに送信するための通信コストや、クラウドセンターのストレージコストなどデータ収集コストの増加が見込まれているという。
このような課題の解決に貢献するのが、今回開発した軽量のエッジAI技術だ。例えば、エッジAIを搭載した車載機で撮影した画像に映り込んでいる物体を認識し、看板や車両の台数などの認識結果を文字データに変換してクラウドセンターに送信する。クラウドセンターでは、この認識結果に基づいて本当に必要な画像データの送信だけを車載機に要求することにより、データ収集に関わるコストを大幅に削減し、効率の良いデータ収集を行えるようになるとしている。
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