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【トラブル10】金型の修正が必要になったらどうしたらよいか?2代目設計屋の事件簿〜量産設計の現場から〜(10)(2/2 ページ)

量産樹脂製品設計の現場でよくあるトラブルを基に、その原因と解決アプローチについて解説する連載。第10回は、金型の修正が必要になった場合の具体的な対処法や修正する際の勘所を詳しく解説する。

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形状として金型では加工が難しいケース

 もう1つお伝えしたいことがあります。現在、3D CADや3Dプリンタの低価格化が進み、これまでモノづくり経験のない方でも欲しい形状(精度や品質は別として)を作れるようになってきました。ただ、その形状を、そのまま射出成形で量産できるかどうかは別問題です。

 連載第1回でも、3Dプリンタでの試作と金型での量産の違いについて触れています。その記事の中では、金型として抜ける形状であるかどうかというお話をしていますが、他にも形状として金型では加工が難しい場合があります。

 それが、金型として“細くて深くなる形状”です。

 金型は、金属の塊を刃物で削って製作しますが、細くて深い形状だと、この刃物が奥まで入らない可能性があります。このような場合、金型を分けたり、電極を用いて放電加工をしたりすれば、対応できなくもありませんが、単に削って作るだけよりも、コストと手間がかかることは承知しておいてください(図5)。ちなみに放電加工とは、電極と加工物との間に発生する火花の熱によって、加工物を溶かして加工する方法です。

細くて深い金型形状の修正アプローチ
図5 細くて深い金型形状の修正アプローチ [クリックで拡大]

連載の最後に

 これまで、いろいろなトラブル事例を紹介してきましたが、その原因は1つとは限りません。また、1つのことが原因でさまざまなトラブルが発生してしまう場合もあり得ます。そのため、いろいろな可能性を検証しなければなりません。

 最終的には、成形の結果を見て判断し、修正することになりますが、上流工程であるデザインや製品設計の段階でトラブルの可能性を考慮し、その対策を反映できれば、後工程の金型製作や成形はとてもスムーズに進められます。樹脂製品の量産に取り組むのであれば、本連載を参考に、さまざまなトラブルの可能性を考慮したデザイン、設計を心掛けてください。長期間お付き合いいただきありがとうございました。 (連載完)

⇒「連載バックナンバー」はこちら

Profile

落合 孝明(おちあい たかあき)

1973年生まれ。2010年に株式会社モールドテック代表取締役に就任(2代目)。現在、本業の樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、中小企業の連携による業務の拡大を模索中。「全日本製造業コマ大戦」の行司も務める。また、東日本大震災をうけ、製造業的復興支援プロジェクトを発足。「製造業だからできる支援」を微力ながら行っている。


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