オンラインで評価ボードを試せる「Lab on the Cloud」、実際どんな感じなのか:組み込み開発ニュース
ルネサス エレクトロニクスが拡充を発表したオンラインの評価ボードテスト環境「Lab on the Cloud」。今回の拡充で総計23種類のボードが利用可能になったが、実際にどのような感じで利用できるのだろうか。「超低消費電力なREマイコンによるIoTエッジ向け音声認識ソリューション」を例に見ていこう。
ルネサス エレクトロニクスは2021年9月7日、同年1月に発表したオンラインの評価ボードテスト環境「Lab on the Cloud」を拡充したと発表した。当初の発表では9種類のボードにとどまっていたが、今回の拡充で14種類が追加され総計23種類のボードが利用可能になった。また、設定やテストプロセスを簡素化するとともに、新たなGUI(Graphical User Interface)と設計パラメータ操作機能を採用し、さらに使いやすいユーザー体験(UX)による柔軟性の高いテスト環境の提供を目指したという。
365日24時間いつでもアクセス可能
Lab on the Cloudは、ルネサスの評価ボードを中核にパートナー企業などと連携して提供する製品開発ソリューションについて、評価ボードなどを物理的に入手して設計を開始する前にオンライン上で素早く開発検討を開始することができるテスト環境である。同社は、製品の早期開発に役立つソリューション「ウィニング・コンビネーション(ウィニングコンボ)」の展開に注力しており、現在は250種類以上をリリースしている。Lab on the Cloudは、このウィニングコンボを活用しての製品開発をより短期間で行えるようにするため開発したもので、オンライン利用によって実物を入手する前の検討が可能になり、365日24時間アクセス可能とすることでグローバル対応も実現している。「コロナ禍でテレワークが求められる中、Lab on the Cloudのようなテスト環境が求められている」(ルネサス)という。
Lab on the Cloudが、実際にどのように活用できるのかを、今回新たに追加された「超低消費電力なREマイコンによるIoTエッジ向け音声認識ソリューション」を例に見ていこう。同ソリューションは、音声認識アルゴリズムを組み込んだエナジーハーベスト(環境発電)用組み込みコントローラー「RE01」と超低IQバックレギュレーター「IS9123」の組み合わせにより、超低消費電力での音声認識と液晶ディスプレイの表示変更などを行えることが特徴。動作電流は1.2mAと極めて小さく、高機能化が求められつつ省電力性能も必要なスマートウォッチやウェアラブル端末などに最適である。
Lab on the Cloudでは、Webブラウザからアクセス可能なGUIベースのプラットフォームを使って、オンラインで実際に同ソリューションを自在に動かすことができる。以下に紹介する動画では、Lab on the Cloudを起動した後、画面中央のマイクをオンにしてから、PCを介して音声コマンドの「スタートアップ」「ウォッチ」「GPS」「ハートレート」「シャットダウン」を遠隔地に設置されている評価ボードに認識させている。PCに入力した音声を評価ボードに直接入力しているのではなく、テスト環境にあるスピーカーから音声を流しているのがポイントだ。画面右側にの枠にマルチメーターの消費電流と併せて表示されている液晶ディスプレイを見ると、起動から始まって、画面モードの変更、動作停止までが、リモートでの音声認識ではあるもののそれほどの遅延なく行えていることが分かる。
なお、Lab on the Cloudのテスト環境が設置されている場所は国内にとどまらずグローバルに展開されている。「ウィニングコンボの開発がグローバルで進められる中、Lab on the Cloudの活動も国内にとどまらないものになっている」(ルネサス)。実際に、超低消費電力なREマイコンによるIoTエッジ向け音声認識ソリューションのテスト環境も海外に設置されているとのことだった。
ルネサスは、2021年8月31日にDialog Semiconductorの買収を完了することで、ウィニングコンボのラインアップをさらに強化する方針を打ち出している。ウィニングコンボの利便性を顧客により分かりやすく理解してもらう上で、コロナ禍にも対応しグローバル提案にもつなげやすいLab on the Cloudは重要な役割を果たすことになりそうだ。
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