小糸製作所が1億ドル投資するLiDARベンチャー、ADAS向け特化で大規模受注獲得:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
セプトン・テクノロジーが2016年5月の設立から注力してきたADAS向けLiDAR事業の成果や戦略について説明。米国大手自動車メーカーが2023年から市場投入する新型車向けの大規模受注が決まっており、小糸製作所から合計1億米ドルに上る出資を受けるなど、今後も拡大するADAS向けを中心としたLiDAR市場での展開を拡大していく方針だ。
ラウドスピーカーのような独自開発技術「MMT」などで差別化
セプトン 日本カントリーマネージャーの倉臼あんどりゅ氏が手に持っているのがLiDARの新製品「Nova」。検知距離は30mと短いが35×35×75mmと小型で、ADAS向け以外にAGV(無人搬送車)などの用途も想定している
セプトンが競合他社との差別化要因に挙げるのが、自動運転車とは異なり大衆車を含めて広く展開する必要があるADASに求められる「低コスト」だ。同社のLiDARは、検知距離が200〜300m、検知角度が60/90/120度から選択でき、角度解像度も0.15〜0.35度となっており、現時点でのLiDARに求められる性能は十分に満たしている。この性能のLiDARを低コストで提供するための構成要素となるのが、検知に用いる光源の種類、検出のためのセンサー、そして3Dイメージング手法として独自に開発した「MMT(マイクロモーションテクノロジー」の3つである。
まずレーザーは、波長905nmのレーザーダイオードを用いており、量産時のコストは1個当たり1米ドルをクリアできているという。検知では、シリコンベースのAPD(アバランシェフォトダイオード)を用いた直接方式のToF(Time of Flight)センサーを採用しており、ここでも低コストを強く意識していることが分かる。
そしてMMTは、LiDARが高価になる原因であるミラー構造を使わない「ミラーレス」を実現しつつ、ミラーレスLiDARで用いられることも多いが検知距離などで制約のあるフラッシュ方式ではないことを特徴としている。ラウドスピーカーからをコーンを取り外したような構造を用いて、光源(レーザー)と検出器(センサー)をスピーカーのボイスコイルで微小なスケールで振動させることにより3Dイメージングが可能なるという。
そして、これらレーザーの照射、センサーによる検出、MMTによる3DイメージングなどはシングルチップのLiDARエンジンASICとして提供できるようになっている。ペイ氏は「ADAS向けという観点では、競合他社に対して大幅な優位性があると考えている。既にグローバルトップ10の自動車メーカーとADASや自動運転技術向けでの採用に向けた交渉を進めており、ティア1サプライヤー18社との間でPoC(概念実証)なども行っている」と述べる。
セプトンは今後、LiDARデバイスにとどまらず、車両への組み込みに必要な車載ソフトウェアを提供することで事業拡大を図りたい考え。「拡大が続いているADAS向けに加えて、スマートインフラ市場でもLiDARの需要は高まってきている。今後のLiDAR市場の多様化に併せて、LiDARによる認知機能までを含めたフルスタックのソリューションも提供できるようにしていきたい」(ペイ氏)としている。
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