2D CADと3D CAD、設計環境としての“違い”とは?:テルえもんの3Dモノづくり相談所(2)(2/3 ページ)
連載「テルえもんの3Dモノづくり相談所」では、3Dモノづくりを実践する上で直面する“よくある課題”にフォーカスし、その解決策や必要な考え方などについて、筆者の経験や知見を基に詳しく解説する。第2回のテーマは「2D CADと3D CADの設計環境としての違い」だ。
2D図面と3Dモデルの違い
では、アウトプットである2D図面と3Dモデルの違いはどこにあるのでしょうか。筆者なりの比較を表1にまとめました。
3Dモデル (立体) |
2D図面 (平面) |
備考 | |
---|---|---|---|
寸法確認 | △ | ◎ | 寸法(サイズ)の確認は図面の方がしやすい |
形状認識 | ◎ | △ | 全体的な形状・デザインは立体で見た方が分かりやすい |
提案力・プレゼン | ◎ | △ | 色を付けたり、背景を入れたりすることでプレゼン力がアップ |
データ互換性 | △ | ○ | 2D図面はDWGやDXFでデータ交換可能。3D CADは種類が多く互換性もさまざま |
情報共有 | 専用ソフト | 紙・PDF | 図面は紙で配布しやすい。汚れてもよく扱いやすい |
表1 3Dモデルと2D図面の比較 |
寸法確認に関しては平面の2D図面の方が、形状認識については立体の3Dモデルの方が確認しやすいといえます。提案力・プレゼン力は、形状に色を付けたり、背景を入れたりして魅力ある画像などを作ることができる3Dモデルの方が優れています。データ互換性については、2D図面も3Dモデルも中間ファイルがあり、データのやりとりができますが、3Dモデルの場合は面のデータも含まれ情報量が多くなり、データの受け渡しがうまくいかないケースも見られます。情報共有は、2D図面は紙やPDFで共有できて扱いやすいのに対して、3Dモデルは専用のソフトやアプリケーションが必要となるケースが多くあります。ただ、最近では無料のビュワーやWebブラウザで形状を確認できるものも登場しています。また、3DモデルをVR(仮想現実)/AR(拡張現実)空間で表示、確認できるツールなどもあります。
2D CADと3D CADの違い
続いて、2D CADと3D CADの違いについて、筆者なりの比較を示します(表2)。
3D CAD | 2D CAD | 備考 | |
---|---|---|---|
作図機能 | △ | ○ | 作図機能は2D CADの方が優れている |
図面作製 | ○ | ○ | 引き分け:3D CADは三面図をミスなく自動で作れる利点がある(設変も連動) |
形状の正確性 | ○ | △ | 3D CADは干渉や質量を容易に確認できる |
データ活用 | ◎ | △ | 3Dであれば、CAEやCAM、3Dプリンタなどへ活用できる |
データ量 | 大きい | 小さい | 3Dの方がデータ量は大きいため、データ保管のために外付けHDDなどが必要 |
価格・コスト | 高価 | 安価 | ソフトは一般的に3D CADの方が高い |
習得時間 | 長い | 短い | 一般的に3D CADの方が時間がかかる |
PCスペック | 高い | 低い | 3D CADの方がハイスペックなPCを要求される |
表2 3D CADと2D CADの比較 |
作図機能については、2D CADの方が一般的に優れています。図面作製については、作図機能に優れる2D CADは隠線処理など見やすい図面を作れますが、3D CADだと立体図を投影して三面図を自動生成できて、3Dモデルを修正すると図面も連動して修正されるため、引き分けとしました。
2D CADで2D図面を作製した場合、正面図と側面図が合わない図面を描いてしまったり、線を描き忘れてしまったりなどの図面ミスも起きやすいです。やはり、形状の正確性に関しては、干渉や質量を容易に確認できる3D CADの方が優れています。データ活用については、3D CADの方がCAEやCAM、3Dプリンタなどへ展開しやすく、幅広い用途で活用できます。ただし、3D CADの方が情報量が多いためデータ容量も大きく、データ保管には外付けのHDDなどが別途必要になってきます。
また、価格・コストですが、一般的に3D CADソフトの方が高価で、習得にも時間がかかります。また、用意するPCのスペックも3D CADの方がハイスペックなものを要求されます。実際、導入や立ち上げにコストが生じますが、3D CAD導入によるメリットが大きいことから、多くの企業で3D CAD導入が進んでいます。
習得時間の差に目を向けてみると、2D CADはいわば“従来の製図作業をコンピュータでデジタル化したもの”といえるため、これまでの設計のやり方を大きく変える必要はありませんでした。これに対して、3D CADはPCの中に実際の部品や製品の立体形状を作成することから、従来の製図作業や2D CADでの設計のやり方に、+αの考え方が求められる(考え方を切り替える必要がある)ため、習得に時間がかかる傾向にあります。
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