2D CADと3D CAD、設計環境としての“違い”とは?:テルえもんの3Dモノづくり相談所(2)(1/3 ページ)
連載「テルえもんの3Dモノづくり相談所」では、3Dモノづくりを実践する上で直面する“よくある課題”にフォーカスし、その解決策や必要な考え方などについて、筆者の経験や知見を基に詳しく解説する。第2回のテーマは「2D CADと3D CADの設計環境としての違い」だ。
皆さん、こんにちは! “テルえもん”こと、小原照記(おばらてるき)と申します。本連載「テルえもんの3Dモノづくり相談所」では、3Dモノづくりを実践する上で直面する“よくある課題”にフォーカスし、その解決策や必要な考え方などについて、筆者の経験や知見を基に詳しく解説していきます。
それでは早速、今回のテーマを見ていきましょう。
今回のテーマ:相談ファイル(2)
2D CADから3D CADへ移行したいと考えています。2D CADと3D CADは設計環境として、具体的にどのような“違い”があるのでしょうか?
テルえもんの対応
今回のテーマは「2D CADと3D CADの設計環境としての違い」についてです。2D CADから3D CADへ移行する際の注意点や課題、そして「ここに注意すれば3D CADへの移行は怖くない!」といったポイントについて、2D設計と3D設計、2D CADと3D CADの違いを比較しながら詳しく説明していきます。
まず、大前提として「CAD」と「設計」は別物だということを押さえておく必要があります。「2D CAD」と「2D設計」は別なものですし、「設計」と「製図」も同じではありません。ここで整理しておくと、CADはソフトウェア(以下、ソフト)であり、製図は2Dの図面を作ることです。そして、設計は製品の機能を検討し、具現化していく作業を意味します。
ソフトに分類される2D CADと3D CADですが、2D CADは2D設計を、3D CADは3D設計と2D設計の両方を行うことができます。誤解されている方も多くいらっしゃいますが、3D CADでも「スケッチ」という機能を使うことで2Dでの設計検討が可能ですし、3Dモデルから2D図面を作製することもできます。ソフトによっては、2D CADで設計した線データを3D CADに取り込めるものもあります。
2D設計と3D設計の違い
2D設計とは、簡単にいうと“点や線といった情報で設計を行うこと”です。紙に穴を開ける文具「パンチャー」を例にすると、図1のように、横から見た状態で基準点や基準線を設け、力点や作用点、支点などを作りながらパンチャーのストローク(動き)などを検討していきます。
そして、2D設計を進めていく場合、基準線をオフセットすることで形状の厚みを表現していき、部品と部品との取り合いを見ながら詳細な形状を2Dの線情報で描いていきます。最後に、個々の部品にばらした図面に対して、加工に必要な寸法公差や幾何公差、仕上げ記号などを入れながら設計情報を出力していきます。
2D設計の場合、「点」と「軸(線)」を基準に設計作業を行います。また、基本的な軸として、2D設計の世界には「X軸」と「Y軸」の2軸があります。これに対し、3D設計の世界では「Z軸」が追加され、X/Y/Zの3軸となります。そして、さらに軸が追加されるだけでなく、3D設計には「面」という概念が加わります。
3D設計には基準面として、X軸とY軸でできる「XY平面」、X軸とZ軸でできる「XZ平面」、Y軸とZ軸でできる「YZ平面」の3つの面があり、図面の三面図で考えた場合、XY平面が「上面(平面)図」、XZ平面が「正面図」、YZ平面が「右側面図」となります。3D設計をする場合には、点と軸の他に、面を設計の基準としてうまく活用する必要があります。
3D設計は、2D設計のようにひとまず横から見た状態だけを検討するといったアプローチをとることができません。必ず厚みと幅を入力して立体形状を作る必要があるため、はじめの構想設計のタイミングだと、少々やりづらさを感じる場合があります。
3D設計が本領を発揮するのは、詳細設計の段階でしょう。3D設計のメリットを最大限生かし、干渉チェックや体積、質量、重心などを正確かつ簡単に求めることができます。
2D設計と3D設計にはそれぞれ良しあしがありますが、両方使えることが重要だと考えます。例えば、カーナビゲーションシステムで目的地までのルートを確認するとき、地図を真上から見た2Dの図の方が経路や現在位置を確認しやすいですよね。これに対して、複雑な交差点や曲がり角は3Dで表示してくれた方がイメージしやすく、曲がり忘れやミスなどを防止してくれます。このように人間の思考というのは、2Dで考えたい/考えた方がよい場合もあれば、3Dで考えたい/考えた方がよい場合もあるのです。そういう意味で、2D設計と3D設計に対応できる3D CADを使うメリットは大きいといえます。
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