インテルの最新CPUアーキテクチャはより広く深く、GPUがHPCのムーンショットに:モノづくり最前線レポート(5/5 ページ)
インテル日本法人は、米国本社が2021年8月19日(現地時間)に開催したイベント「Intel Architecture Day 2021」で発表した、新たなCPUとGPUのアーキテクチャについて説明した。
「Ponte Vecchio」が競合との差を一気に乗り越えるムーンショットに
Xeは高性能ゲーミングだけでなく、「Xe HPC」としてHPC向けにも展開する。太田氏は「インテルはHPC分野で技術的に積み残してきたことが数多くあり、幾つかの仕様で競合との差が大きく開いているという現状がある。これを潔く認めつつ、競合との差を一気に乗り越える“ムーンショット”になるのがXe HPCだ」と説明する。
Xe HPCもコア単位はXe-coreを用いているが、Xe HPGとは構成が少し異なる。「Xe-coreは、命令セットのレベルから市場セグメントに最適化して設計できるという特性を生かした」(太田氏)。例えば、HPCで求められるFP64(倍精度浮動小数点数)に対応したり、マトリックスエンジンのビット幅をより広く取ったりしている。
なお、Xe HPCのスライスは、それぞれ16個のXe-coreとレイトレーシングユニットなどから構成されている。さらに、このスライスを4つ束ねて高速のL2キャッシュやHBM2eコントローラー、専用ファブリックの「Xe Link」などを組み込んだスタックとなる。このスタックが、HPC向けで1個のGPUとして運用される単位になる。このスタックは、追加コンポーネントなしで最大8つまで接続可能であり、Xe Linkにより8つのスタックを1つのノードとして利用できる。
このXe HPCを製品として展開する際の形になるのが「Ponte Vecchio」である。インテルが2021年7月に発表したさまざまな半導体技術を盛り込んだPonte Vecchioは、A0シリコンと呼ぶ初期サンプルの動作を確認しており、AI処理性能はFP32で45TFlops以上、メモリファブリックの帯域幅は5TB/s以上、外部接続インタフェースの帯域幅は2TB/sを達成している。「先述した競合との差を埋めるのに十分な性能であり、まだまだやることはたくさんあるが希望が見えてきた」(太田氏)という。
Ponte Vecchioは、1ユニットでの利用だけでなく、Xe Linksを介して複数ユニットを接続したり、Sapphire Rapidsと組み合わせたりしたサブシステムなどの構成も考えられる。しかし、CPUとGPUが共存するシステムでの課題として、CPUとGPUを用いたソフトウェア開発環境の分断がある。インテルはこの課題を解決するためのツール「oneAPI」を提唱しており、インテルの競合であるArmのCPU、NVIDIAやAMDのGPUなどにも対応するオープンなツールとなっている。
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