モバイルヘルスアプリを用いたドライアイの共同研究を開始:医療機器ニュース
東北大学東北メディカル・メガバンク機構と順天堂大学は、モバイルヘルスアプリを用いたドライアイの共同研究を開始する。アプリで収集したデータとゲノム解析情報を組み合わせ、新しい病型分類の確立や発症に関わる遺伝子多型の特定を目指す。
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と順天堂大学は2021年8月4日、モバイルヘルスアプリケーションを用いたドライアイの共同研究を開始すると発表した。共同研究の期間は2022年6月までを予定している。
同研究では、眼科領域のコホート調査にモバイルヘルスアプリを活用し、ドライアイが環境要因や生活習慣、遺伝子要因とどのように関連するのかを明らかにする。ゲノム情報を伴う眼科領域の大規模研究にモバイルヘルスアプリを利用するのは世界初の試みだという。
モバイルヘルスアプリは、順天堂大学が開発した「ドライアイリズム」を用いる。同アプリでは、ドライアイの自覚症状に加え、気温や湿度、花粉などの環境要因、モニターの使用時間、コンタクトレンズ装用といった生活習慣などさまざまな情報を収集する。
調査対象は、詳細な健康調査を実施するためにToMMoが設置した地域支援仙台センターの来所者で、スマートフォン上で電子同意を取り、自宅などでのデータ収集を依頼する。参加者の目標人数は3000人としている。
コホート調査とは、ある特定の人々の集団を一定期間にわたり追跡し、生活習慣や遺伝要因、環境要因などと疾病発症の関係を明らかにするための調査だ。ToMMoは、東日本大震災の復興事業「東北メディカル・メガバンク計画」において、調査参加者が調査施設に来所した際にデータを収集し、15万人規模の地域住民コホート調査と三世代コホート調査を継続している。これらの調査はゲノム解析も進んでいる。
ドライアイは、日本では2000万人以上が罹患する眼疾患であり、さまざまな要因が合わさって発症する。今回の計画では、東北メディカル・メガバンク計画によるゲノム解析情報と組み合わせて、ドライアイの新しい病型分類の確立と、発症や重症化に関わる疾患遺伝子多型の特定を目指す。また、近年注目されている、予防(Preventive)、個別化(Personalized)、予測(Predictive)、患者参加型(Participatory)の医療「P4 Medicine」の提供基盤となることも期待される。
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