その名も「kawasaki」、国内初のゲート型商用量子コンピュータが稼働:量子コンピュータ(2/2 ページ)
東京大学とIBMは、日本初導入となるゲート型商用量子コンピュータ「IBM Quantum System One」が稼働を開始したと発表。設置場所は「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」で、東京大学が設立した量子イノベーションイニシアティブ協議会に参加する慶應義塾大学や、日本IBMを含めた企業11社を中心に活用を進めることになる。
27量子ビットの量子チップ「Falcon」を搭載
今回設置したSystem Oneは、IBMのゲート型商用量子コンピュータとして稼働が最も安定している、27量子ビットの量子チップ「Falcon」を搭載している。IBMが量子ビットやエラー率、連結量などを加味して独自に規定した量子コンピュータの性能指標である量子ボリュームは32である。IBMが米国外に設置する商用量子コンピュータとしては、ドイツのフラウンホーファー研究機構のものに次いで2番目となる。ユーザーが利用する際に呼び出すコンピュータ名は、設置場所の川崎にちなんで「kawasaki」となっている。
このkawasakiは、2019年12月にIBMと東京大学が発表した「Japan-IBM Quantum Partnership」に基づき東京大学が占有使用権を有している。東京大学はkawasakiの活用に向けて、企業、公的団体や大学など研究機関と協力していくが、まずはQII協議会の加盟企業による活用が進められることになる。なお、QII協議会の加盟企業は当初、JSR、DIC、東芝、トヨタ自動車、日本IBM、日立製作所、みずほフィナンシャルグループ、三菱ケミカル、三菱UFJフィナンシャル・グループの9社だったが、現在はソニーグループと三井住友信託銀行が加わり11社となっている。
kawasakiが設置されているのは、JR新川崎駅から徒歩約10分の位置にあるKBICの新館「NANOBIC」である。ナノ・マイクロ産学官共同研究施設として2012年に開設されたNANOBICは、大型クリーンルームを備える他、ナノ・マイクロ領域の超微細加工・計測が行えるように、電気、冷却水、ガスなどインフラの安定供給や耐振動環境などが整備されており、量子コンピュータの常時安定稼働にも最適である。KBICの敷地は鉄道線路に隣接しているものの「量子コンピュータの稼働に大きな影響を与える振動がないことはあらかじめ確認してある」(IBMの説明員)という。
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