新車グローバル生産、8社全てで前年増を継続するも半導体不足の影響は深刻:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
日系乗用車メーカー8社による2021年5月のグローバル生産実績は、COVID-19の感染拡大の影響で生産が停滞した前年同月と比べて8社全てが大幅な増加を示した。その一方で、世界的な半導体不足の影響は深刻で、コロナ禍前の2019年5月との比較では8社合計のグローバル生産は32%減にとどまっている。
スズキ
スズキの5月のグローバル生産は、前年同月比148.4%増の12万2318台と4カ月連続のプラスだった。グローバル生産の半数以上を占めるインドは、前年がコロナ禍による生産停止で同10倍と高い伸びを示した。だが、インドでは変異株による急激なCOVID-19感染拡大によって医療用酸素が不足し、スズキは工業用酸素を医療向けに提供するために半月以上稼働を停止。このため、インドは2019年実績に対して大きく台数を減らす格好となった。インド以外でもシェア6割を握るミャンマーではクーデターにより2月から生産停止が続いている。その結果、海外生産は同370.2%増の6万5951台と4カ月連続のプラスを確保したが、先行きは不透明な状況と言わざるを得ない。
一方、国内生産は前年同月比60.0%増の5万6367台と3カ月連続で増加した。半導体不足により4月に続き相良工場で稼働停止を実施したものの、コロナ禍で前年5月の実績が低かったためプラスを確保した。輸出も同様で同2.5倍と高い伸びを示した。
ダイハツ
ダイハツ工業の5月のグローバル生産台数は、前年同月比161.0%増の10万6269台と3カ月連続で増加した。国内生産は同75.3%増の6万3561台と3カ月連続の前年超え。軽自動車が同149.6%増と6カ月連続でプラスを維持したほか、登録車も同8.5%増と2カ月連続でプラスとなった。これはトヨタ向けにOEM供給する「ルーミー」や「ライズ」の販売好調によるもので、5月の登録車生産として過去最高を更新した。
海外生産は前年同月比856.5%増の4万2708台と3カ月連続のプラス。伸び率は8社中最大だった。特に、インドネシアは前年がCOVID-19感染拡大で大幅に生産を絞っていた反動増が大きく表れている。ただ、2019年と比較すると3割以上少なく、依然として東南アジアは本格回復には至っていない様子がうかがえる。
マツダ
マツダの5月のグローバル生産台数は、前年同月比79.5%増の7万6155台と3カ月連続で増加した。ただ、マツダでは半導体の供給不足によりグローバル生産で約1万台の減産影響があったとしており、2019年の台数と比べても3割以上少ない実績。国内生産は、同262.6%増の4万9660台で3カ月連続のプラス。8社の中でも最も高い伸び率となった。国内販売の増加に加えて、輸出が同421.2%増と大幅なプラスとなり、国内生産をけん引した。車種別では「CX-5」が同9倍、「マツダ3」が同6倍、「CX-9」が同14倍など、軒並み高い伸びを見せた。
好調な国内生産に比べると、海外生産は伸び悩んでいる。前年同月比7.8%減の2万6495台と3カ月ぶりにマイナスへ転じた。8社の中で海外生産が前年割れとなったのはマツダのみ。要因は中国で、前年のコロナ禍からの回復特需に対する反動や中国専用モデル「CX-4」をはじめ、「マツダ6」「CX-30」などが減少し、同49.7%減と半減。3カ月連続のマイナスで、減少幅も日系メーカーで最大だった。タイもピックアップトラック「BT-50」の生産終了により、同18.4%減と低迷。一方、メキシコは前年5月がCOVID-19感染拡大で生産停止を余儀なくされたため大幅増となった。
三菱自
三菱自動車の5月のグローバル生産は、前年同月比200.2%増の6万9025台と2カ月連続で増加するなど回復基調が続いている。ただ、半導体不足の影響により計画比で1万6000台減産し、2019年5月と比較すると3割以上減少した。国内生産は同187.3%増の2万4086台と、2カ月連続で増加。前年がコロナ禍で伸び悩んだことで主力モデルの「デリカD:5」や「eKワゴン」「eKスペース」などの販売が好調に推移したことに加え、「エクリプスクロス」のプラグインハイブリッド車の純増もプラス要因となった。輸出も同190.0%増と伸長し、国内生産に貢献した。
一方、海外生産も前年同月比207.7%増の4万4939台と3カ月連続のプラス。中国は同20.2%減と伸び悩んだものの、主力拠点のタイが同4.5倍、インドネシアは前年5月が生産を停止していたなど、東南アジアが大幅な増加を見せた。
スバル
スバルの5月のグローバル生産台数は、前年がCOVID-19感染拡大で生産停止を余儀なくされたため、前年同月比312.2%増の6万6206台と2カ月連続で前年実績を上回った。伸び率も8社の中で最大となった。ただ、半導体不足による生産停止の影響は大きく、2019年との比較では3割弱ほど減らした。
主力の国内生産は、前年同月比238.9%増の3万7671台で2カ月連続のプラス。国内販売では「レヴォーグ」の新型車効果に加えて、主力モデルの「インプレッサ」や「フォレスター」も健闘している。輸出も好調で、同7.4倍と大幅に増加した。海外生産は、同476.8%増の2万8535台と2カ月連続の増加。ただ、米国では供給能力を上回る受注の獲得により在庫不足の状況が続いており、今後の米国ビジネスの不安因子となっている。
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