COVID-19は日本のモノづくりに何をもたらしたのか、マクロ指標から読み解く:ものづくり白書2021を読み解く(1)(4/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2021年版ものづくり白書」が2021年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2021年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第1回ではCOVID-19の影響を色濃く受けた日本のモノづくりの現状についてまとめる。
資金調達においては長期借り入れ金が増え「苦しい」企業が増加
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」の資金繰り判断DIをみると、2020年第2四半期はCOVID-19の感染拡大の影響などにより資金繰りが「苦しい」と判断した企業が増加した(図13)。
製造業の資金調達については、COVID-19の感染拡大する状況において借り入れによる資金調達額が増加しており、なかでも長期借り入れ金が増加している。(図14)。
現金給与総額は大きく減少
2019年の完全失業率は2.4%で、前年に引き続き3%を下回る低水準が続いていたが、2020年に入り上昇に転じ、同年10月には3.1%と、2016年8月以来の水準となった。有効求人倍率は2018年6月から2019年8月までの間、1.6倍を超える水準が続いてきたが、米中貿易摩擦に伴う中国経済の減速の結果や、製造業の生産活動が弱まったことなどの影響を受け、その後は低下傾向となっている。さらに2020年はCOVID-19の感染拡大の影響もあり同年9月には1.04倍まで低下した(図15)。
残業時間などを表す所定外労働時間をみると、2016年半ば以降、企業の設備稼働率の増加傾向により2017年には増加したが、2018年後半からは減少傾向にある。この傾向は、2019年は一層顕著となり、2020年に入ると大幅に減少した(図16)。この背景にはCOVID-19の感染拡大に伴う新しい働き方改革の浸透や生活様式の刷新があるとみられる。
製造業における月々の賃金動向を確認すると、所定内給与は、2017年11月以降30カ月連続で前年同月以上となっている一方で、所定外給与をみると、2018年12月以降26カ月連続で前年同月以下の水準となった。2020年にはCOVID-19の感染拡大などの影響により、所定内給与、所定外給与ともに大幅な減少となった結果、現金給与総額は大きく減少した(図17)。
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