外乱影響に惑わされないパナソニックの画像センシング技術、60年の歴史が裏打ち:人工知能ニュース(2/2 ページ)
パナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)が「現場センシングソリューション」の一角を担う画像センシング技術の開発状況について説明。監視カメラの開発から60年以上の歴史を積み重ねてきた同技術を基に、今後はディープラーニング技術との組み合わせによって、より幅広い分野への展開を目指す方針だ。
パレット上の荷物の2次元コード認識は60個を1分で完了
半野氏は最新の画像センシング技術の事例として「物体認識」「人密集可視化/人流可視化」などについて紹介した。
物体認識
物体認識の事例で示したのは、倉庫などのパレット上に積み上がった多数の荷物に付いている2次元コードを、ディープラーニング技術とネットワークカメラの制御の組み合わせで高速に認識するシステムである。まずは、PTZ(パン、チルト、ズーム)が可能な一般的なネットワークカメラを4台配置した中央に、フォークリフトなどを使って荷物を積み上げたパレットを設置する。各カメラは、レンズ制御で広角撮影を行ってから、無作為に積まれた荷物の大小さまざまな複数のラベルの位置を検知、記憶する。次に、それぞれのラベル位置からカメラ旋回確度、ズームを自動計算してラベルの2次元コードを読み取り、全てのラベルの2次元コードを読み取るまでこの作業を繰り返す。なお、暗い場所や光沢付きで反射が起こるラベルについても、カメラの明暗制御で正確に読み取れるという。
これまで倉庫における荷物のバーコードチェックは作業員がハンディターミナルなどを使って行うのが一般的だった。一方、この物体認識技術であれば、作業を自動化できるだけでなく、人手による作業で必ず発生するチェック漏れなども起こらない。認識速度については、パレット上の60個の荷物について、作業員がハンディターミナルでチェックする場合は10分かかっていたが、パナソニックの物体認識技術は1分で済んだという。
なおこの技術は、物流関連を含めた複数企業での実証実験を行っており、早ければ2021年度内にもシステム納入したい考えだ。
人密集可視化/人流可視化
人密集可視化/人流可視化では、従来は人を等身大で認識する検出ベースモデルだったため、処理負荷が高く、部分隠蔽(いんぺい)も起こりやすいため、可視化できる密集度の精度が低かった。そこで、人を頭部で認識する密度推定モデルを採用し、処理負荷の低減と広範囲での認識を実現し、より高い精度での密集度計測を実現した。また、認識した人の頭部の動きベクトル抽出することで、群衆移動速度をリアルタイムに計測できるようになった。
屋外で撮影した画像を用いる場合も多いため、外乱影響への対応も欠かせない。人を頭部で認識する際に、同じカメラ画像に写り込んだフェンスの網の目や木の葉などを誤って認識することもある。また、雨天時には、人は傘をさしているので頭部を認識できない。「フェンスの網の目や木の葉はオーグメンテーションによる学習で解決できる。雨天時の傘の認識は独自アルゴリズムで対応した」(半野氏)という。
【訂正】PSSJからの申し入れにより3つ目の事例に関する文章と図版を削除しました。
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