ボッシュのウエハー工場がドイツで稼働、デジタルツインを初めて本格導入:車載半導体
ボッシュ(Robert Bosch)は2021年6月7日、ドイツのドレスデンに半導体の前工程処理を行うウエハー工場を新設したと発表した。同社としては初めての、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)が連携して製造プロセスを管理する生産拠点となる。投資額は10億ユーロ(約1330億円)。生産能力を倍増する余裕を残しているという。従業員数は700人まで増やす。
ボッシュ(Robert Bosch)は2021年6月7日、ドイツのドレスデンに半導体の前工程処理を行うウエハー工場を新設したと発表した。同社としては初めての、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)が連携して製造プロセスを管理する生産拠点となる。投資額は10億ユーロ(約1330億円)。生産能力を倍増する余裕を残しているという。従業員数は700人まで増やす。
当初の計画よりも半年早く操業を開始した。生産したチップは2021年7月から同社の電動工具向けに搭載を開始し、車載向けは3カ月前倒しして2021年9月から生産する。車載半導体の供給不足については、「新工場の稼働によって供給は多少改善するが、業界全体の問題解決にはならない。年内は自動車業界の半導体不足で厳しい状況が続くが、2022年に入ってから徐々に改善すると期待している」(ボッシュ)という。
コロナ禍での工場稼働となったが、スマートグラスなどの活用によって遠隔地から現地まで移動できない専門家が設備の立ち上げを支援した。今後のメンテナンスでも、スマートグラスを通じて遠隔地からもサポートを受けられるようにする。
製造プロセスは65nmで、微細化など最新技術は追わない方針だ。「(自社製品である)車載用やコンシューマー用に求められる半導体に最適なものを提供していく」(ボッシュ)としている。また、半導体が製品のイノベーションのカギであり、製品全体の最適化には半導体の知見が必要となることから、内製や手の内化にこだわる。
ドレスデンの新工場には、AIとIoTが連携する「AIoT」や、3年がかりで工場全体を3Dモデル化したデジタルツイン、5Gなどを取り入れた。これに合わせてデータセントリックな新たなITインフラも構築した。デジタルツインは工場の建設中から構築しており、建屋やインフラ、供給や廃棄のシステム、ケーブルダクト、ベンチレーションシステム、機械加工ラインなど約50万個の3Dオブジェクトが含まれる。
デジタルツインでは、AIoTによって生成される膨大なデータを活用する。生産設備やセンサー、材料、製品から1秒間に書類500ページ分、1日で書類4200万ページのデータが生成され、集中データベースに集められる。データは全ての従業員が扱えるものとし、単一のデータベースをさまざまな用途に活用する。
これらのデータによって操業中の製造プロセスをリアルタイムに監視するだけでなく、これらのデータをAIで分析して製品のわずかな異常や設備でメンテナンスが必要になる兆候を把握して事前に対策を打つ。生産プロセスの改善や、今後の生産能力拡大においてもデジタルツインを使う。データ活用の取り組みは、ウエハー製造の先に続くサプライチェーンにも展開したい考えだ。
新工場は、グリーン電力と低炭素な天然ガスによって電力をまかなうため、カーボンニュートラルを達成しているという。また、電気系統への安全装置や防火措置など火災への対策や、電力供給を途絶させない設備による停電対策なども備えた。
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