凸版印刷がSAPのERPシステムなど導入、グローバルなデータ駆動経営目指す:製造IT導入事例
SAPジャパンは2021年6月2日、凸版印刷がDX事業を推進するためのIT基盤としてERPシステム「SAP S/4HANA」など3製品を導入した。安定性と拡張性を持つERPシステムを通じて国内外拠点のデータ連携を促進し、凸版印刷のデータドリブン経営を実現する。
SAPジャパンは2021年6月2日、凸版印刷がDX(デジタルトランスフォーメーション)事業を推進するためのIT基盤としてERPシステム「SAP S/4HANA」など3製品を導入したことを発表した。製品同士の連携で安定性と拡張性を持つERPシステムによって、国内外拠点をつなぐデータ基盤を構築して、凸版印刷のデータドリブン経営を推進する。
安定性と拡張性を実現
今回、凸版印刷が導入を決めたのはSAP S/4HANA、SAPが提供するシステムの運用設計などを管理するクラウドサービス「SAP HANA Enterprise Cloud」、そしてSAP S/4HANAのローコード/ノーコード開発による機能拡張などを実現する「SAP Business Technology Platform」の3製品だ。
凸版印刷は2021年5月に発表した中期経営計画の中で、グローバルに社会課題を解決するリーディングカンパニーを目指す「Digital & Sustainable Transformation」を目標に掲げている。その重点施策の1つとして挙げたのが、システム基盤のモダナイゼーションを通じたデータドリブン経営の実現だ。国内外にあるグループ企業の情報をクラウド上で一元化することで、自社競争力の強化を目指す。
またクラウド化によって、同社が「Erhoeht-X(エルヘートクロス)」と総称する、データ活用を機軸としたDX関連事業を強化する狙いもある。中期経営計画では5年間で200億円規模のシステム投資を計画していることを明かした。
こうした取り組みのためのIT基盤として採用したのが、SAP S/4HANAなどの3製品である。SAP S/4HANAを用いてグローバルスタンダードに即したERPシステムを構築できる点、また、SAP HANA Enterprise CloudやSAP Business Technology Platformを用いることでIT基盤としての安定性や、事業変化に対応できる拡張性が実現できる点を評価した。これらの取り組みによって、製造現場のDXを支援するクラウドサービス「NAVINECT」や商品データベースの構築などを通じた流通業の総合的なDX支援サービスの強化を図る。
凸版印刷 執行役員 デジタルイノベーション本部長兼DXデザイン事業部 副事業部長の伊藤隆司氏は「当社グループは、国内はもちろん海外にいくつも拠点がある。グループ企業全体のデータを、SAPの製品群を使ってつなげていきたい。これによって自社内のDXを推進し、また顧客に提供するDX事業を強化する。また、新たに構築したIT基盤によって、持続可能な社会を実現するための取り組み、SX(サステイナブルトランスフォーメーション)も進めていく」と語った。
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