ソニーのイメージセンサー事業が「反転攻勢」へ、2025年度シェア60%目標を堅持:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
ソニーがCMOSセンサーをはじめとするイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野の事業戦略を説明。コロナ禍前の2019年5月に発表した、2025年度におけるイメージセンサー金額シェア60%、3D ToFセンサーなどのセンシング事業の売上構成比30%という目標を堅持する方針である。
「ロジックチップの確保は重要、日本に工場ができれば大きな意味を持つ」
I&SS分野の成長に向けて期待していたセンシング事業は、イメージセンサーに対する売上構成比が2019年度で4%、2020年度も4%となっており、まさに足踏み状態だ。清水氏は「今後の市場動向次第では、2025年度に売上構成比30%という目標の達成時期を見直す必要があるかもしれないが、現時点では変更しない。引き続き、さまざまなカテゴリーでセンシング事業を拡大していく」と強調する。FA向けで期待できる赤外領域を検知可能なSWIR(短波長赤外)センサーや車載向けなども、センシング事業の拡大に貢献するとしている。
I&SS分野の中核であるモバイル向けイメージセンサーは、2019年度に最高益を達成したものの、2020年度は市場環境変化の影響を受けて減益となり、20201年度もさらなる減益を見込んでいる。「直近の市場環境は回復傾向にある。2021年度は収益回復は叶わないが、2022年度の成長軌道への回帰に向けた重要な年になる」(清水氏)として、「顧客基盤の分散・拡大の推進」「高価格帯向けの高画質多機能なセンサー開発の推進」「中価格帯は微細画素+新技術で差異化」という3つの重点方針を掲げた。
車載向けイメージセンサーは、2016年度の事業部発足以降、2021年度まで年平均50%で売上高を成長させている。自動車メーカーの採用社数も、2020年度は2016年度比で3倍、2025年度は2020年度比で3倍に拡大し、採用地域も広がっていく見通しだ。
これらモバイル向け、車載向けを含めたイメージセンサーの金額シェアは、2019年度の53%から2020年度は49%に減少したものの、中長期での成長が続くとして、2025年度に60%という目標は変更していない。
イメージセンサーの設備投資計画については、2020年度は市場環境の変化に合わせてブレーキをかけたが、2021年度は2022年度以降の需要に対応するため積極的な投資を行う。2018〜2020年度の投資総額は5800億円だったが、2021〜2023年度はこの5800億円を上回る規模になる。ただし2021年度をピークに、2022年度以降は投資額を減らしていくことになるという。
なお、会見では、台湾のTSMCとの合弁工場建設についての報道に対してコメントを求められたが、「当社はロジックチップの生産はほとんどを外部委託している。直近ではファウンドリーのキャパシティーがタイトになっているのは事実だが、これまで契約してきた複数のパートナーとの良好な関係を続けていくことが重要だと考えている。TSMCの件についてはコメントを差し控えるが、ロジックチップの長期のキャパシティーを確保することは重要であり、安全保障の観点からも日本に工場ができれば安定調達に向け大きな意味を持つと理解している」と説明した。
インテリジェントビジョンセンサーは54件の商談が進行中
清水氏は、I&SS分野の将来的なけん引役として期待する、インテリジェントビジョンセンサー「IMX500」によるソリューション事業の状況についても説明した。画素チップとロジックチップを一体化することでAI処理機能を搭載するIMX500は、2020年5月の発表から280件の問い合わせがあり、そのうち54件で商談が進行している。最終顧客との商談が10件あり、ソニーが最も力を入れているリテールが6社、FAが2社などとなっている。残りの44社はカメラメーカーやSIer、ソフトウェアベンダーなどのパートナーだ。
商談事例としては、国内大手リテール顧客のスマートカメラや、2021年6月からPoC(概念実証)を始めるローマ市のスマートカメラ、グループ会社であるソニー・ミュージックソリューションズのリテール向けAR MAPソリューションなどを挙げた。
清水氏は「2020年度は環境変化もあって苦しい年になったが、目標はぶらさず、2021年度は『反転攻勢』の年にしたい。今後もさまざまな環境変化はあり得るが、常に変化に対する心を持ち、環境に最も適応した者が生き残る『適者生存』の意識を組織全体に浸透させ、将来にわたって成長できるようにしたい」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- モビリティとIoTセンシングを新たな成長のカギに、ソニーの経営戦略
ソニーグループは2021年5月26日、経営方針発表会を開催。ソニーグループと直接つながる人を現在の1億6000万人から10億人に拡大する他、「モビリティ」と「IoTセンシング」領域の技術開発を強化し、新たな価値創出を目指す方針を示した。 - ソニーは最終利益1兆円超えでも慎重に、2021年度は減益見通し
ソニーは2021年4月28日、2021年3月期(2020年度)の業績を発表。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を逆に追い風とし、売上高、営業利益、純利益などの主要指標で過去最高を達成する好業績となった。 - ソニー、有効1億2768万画素の産業機器向け大型CMOSイメージセンサーを商品化
ソニーは2021年3月9日、産業機器向けに有効1億2768万画素のグローバルシャッター機能搭載大型CMOSイメージセンサー「IMX661」を商品化すると発表した。 - 300m先を15cm間隔で測定可能、ソニーがSPAD画素の車載用積層型TOFセンサー開発
ソニーは2021年2月18日、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)画素を用いた車載LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)向け積層型直接Time of Flight(dToF)方式の測距センサーを開発したと発表した。車載LiDAR向け積層型測距センサーとしてSPAD画素を用いたのは「業界初」(ソニー)だという。 - エッジAIとイメージセンサーを融合したインテリジェントビジョンセンサー
ソニーは、イメージセンサーにAI処理機能を搭載したインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」「IMX501」の商品化を発表した。画素チップとロジックチップを重ね合わせた積層構造を採用している。 - ソニーが描く“走るコンピュータ”としてのクルマ
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2020年9月8〜30日、オンラインでのユーザーイベント「AWS Summit Online」を開催。その中の特別講演として、ソニー AIロボティクスビジネスグループ 執行役員の川西泉氏が登壇し「VISION-S プロジェクト:ソニーのモビリティに対する取り組み」をテーマに、同社が2020年1月に技術見本市「CES」で発表した次世代自動車プロジェクトの概要や今後の挑戦について紹介した。