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デンソーが人工光合成システムを開発中、回収した炭素はカーボンナノチューブに:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
デンソーは2021年5月26日、オンラインで事業戦略説明会を開き、2035年のカーボンニュートラル達成に向けたロードマップを発表した。
CO2回収に関しては、人工光合成や工場でのCO2循環に取り組む。人工光合成システムなどを2030年までに事業化し、2035年の売上高3000億円を目標とする。
現在、鉄鋼や重工系などの工場ではCO2回収が始まっているが、鉄鋼や重工系以外の業種の工場や家庭から排出されるCO2や大気中のCO2は、鉄鋼や重工と比べて小規模かつ低濃度であるため回収が難しいといわれている。デンソーはどこでもCO2を回収できるシステムを目指して開発を進めている。
開発中のユニットは、太陽光発電など再エネでCO2を回収、炭素を資源として有効活用する。炭素変換ユニットがCO2を含む溶液を電気分解し、独自開発の電極セル上に炭素を生成するシステムだ。生成した炭素はカーボンナノチューブなどの素材として活用する。森林と比べた面積当たりのCO2回収量は10倍にも上るという。
また、安城製作所ではCO2循環プラントの実証実験も開始した。こちらはCO2の再エネルギー化に向けた取り組みで、ガスを使用する機器の排気から回収したCO2と、再生可能エネルギーによる電力で生成した水素からメタンを合成し、エネルギー源として再利用する。脱水器やCO2回収器、水素発生装置、メタン化反応器などの設備で構成されており、豊田中央研究所と共同開発した。CO2の再エネルギー化や再資源化も推進し、カーボンニュートラルを達成する。
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