感性設計を基本とした常套的デライトデザインの方法:デライトデザイン入門(3)(2/3 ページ)
「デライトデザイン」について解説する連載。今回からデライトデザインの具体的な事例も交えながら理解を深めることとする。連載第3回では、デライトデザインの1つのアプローチとして、「感性設計」を基本とした常套的デライトデザインの方法について、ドライヤーを例に説明する。
評価グリッド法で得たキーワードにSD法を適用する
図3に、実際に評価グリッド法を用いて、ドライヤーに関する人の感じ方を言葉として抽出した結果を示す。具体的には、市場のドライヤーから23機種を選定し、複数の被験者に対してこの中から「ベスト3」と「ワースト3」を選択してもらい、それぞれに対して評価グリッド法で言葉を抽出した。出てきた言葉を幾つかにグルーピングし、「持ちやすい」でまとめたものが図3である。また、図4はその全体像を示したものだ。この評価グリッド法によって、ドライヤーに関する14個のキーワードを抽出できた。
図3、図4で抽出された14個のキーワードの中には似通っているものもあり、もう少し分析が必要である。そこでSD法(参考文献[4])を適用する。SD法の“SD”とは「Semantic Differential」の略で、反対の意味を持つ形容詞を尺度の両端に置いた複数の形容詞対群を用いた官能評価手法のことである。
参考文献:
[4]市原茂、セマンティック・ディファレンシャル法(SD法)の可能性と今後の課題、人間工学、Vol.45, No.5, 2009
図5に評価グリッド法で抽出した14個の形容詞対を用いたSD法による被験者実験の様子を示す。形容詞対は図3、図4のキーワードを基にその反対語を対に作成した。尺度は「5」に設定し、例えば、“持ちやすい − 持ちやすくない(※注1)”に関して、非常に持ちやすい場合には「5」、少し持ちやすい場合には「4」、何とも言えない場合には「3」、少し持ちやすくない場合は「2」、非常に持ちやすくない場合には「1」を選択する。ここでは約40人の被験者に回答してもらった。
※注1:反対語として“持ちにくい”とする場合も多いが、今回の対象機種は全て市場に出回っている製品であり、一定の品質はクリアしていると考え、“持ちやすくない”とした。
SD法による被験者実験結果を用いた因子分析(※注2)結果(因子負荷量)を図6に示す。これから、14のキーワードは持ちやすさ、スタイル、心地よい音の3つに分類することができることが分かる。
※注2:因子分析とは、統計学上のデータ解析手法の1つで、多変量データの背後に潜んでいる因子を明らかにする。
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