ザイリンクスは5G通信分野の売り上げ好調、ペン氏CEO就任以来の事業振り返り:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
ザイリンクスは2021年5月14日、同社 社長 兼 CEOのビクター ペン(Victor Peng)氏が、2018年に就任して以来の事業成長に関する説明会を開催した。5Gネットワークや通信局向け事業の他、自動車や産業/科学/医療などの分野向け製品が大きく成長した。
ソフトウェアを含めたプラットフォームビジネスを展開
ペン氏は就任以来、プラットフォームソリューションの展開にも注力してきた。データセンター向けのAlveo演算アクセラレータカードや、サムスン(Samsung)と開発したコンピューテショナルストレージなどを展開している。産業用途ではKria SOM(システム オン モジュール)など、ドメインごとに最適化したカード製品のラインアップ拡張に努めている。
ハードウェアの強化だけでなく、ソフトウェア領域でも顧客志向の開発を続けるとして、ペン氏は「新規ユーザー向けにAPIを充実させる他、ライブラリを拡充したり、開発環境自体を提供したりする必要があると考えている。プログラミング言語ではCやC++、Pythonに、標準フレームワークとしてTensorFlow、PyTorch、Caffeに対応する」と説明した。
また、ペン氏は競合他社に対するザイリンクス独自の強みとして、「アダプティブコンピューティング技術によって、AIアプリケーションに合わせたハードウェアの高速化が果たせる点だ」と語った。こうした技術力を表すのがザイリンクスのAIエンジンを搭載したVersalと非搭載のUltraScale+による比較実験で、GoogleNetによる画像分類実験を行った場合、Versalでは20倍の速度で処理ができたという。
ペン氏はCEO就任以降の事業展開の総括と今後の展望について「2018年以降、成長戦略を大きく進めることができた。コア市場に当たる5G、自動車、ISM、A&Dでは、多くの製品を提供している。アダプティブコンピューティングを加速するための施策を打つとともに、製品のエコシステムを整備することで、既存の顧客にはさらなる付加価値を提供しつつ、新規顧客も呼び込める戦略を実現していく」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ザイリンクスが事業方針を説明、AMDの買収でも“アダプティブ”を堅持
ザイリンクスがオンラインで会見を開き事業方針を説明。2021年末にはAMDにいる買収が完了する予定だが、従来と変わらず適応型(アダプティブ)演算プラットフォームを推進する事業方針を堅持していくという。 - 小型パッケージの高性能エッジコンピューティング向けFPGAを発表
ザイリンクスは、高性能エッジコンピューティング向けに「Artix UltraScale+ FPGA」「Zynq UltraScale+ MPSoC」を発表した。TSMCのInFOパッケージ技術を採用し、従来よりも70%小型のフォームファクタで提供する。 - 医療機器で存在感高めるザイリンクス、オリンパスや「da Vinci」も採用
ザイリンクスは、医療機器分野における同社製品の採用状況について説明した。画像診断機器におけるAIの採用が広がるとともに、従来スタンドアロンで用いられてきた医療機器がIoTとして通信接続されるようになることで、ArmのアプリケーションプロセッサとFPGAのファブリックを併せ持つ同社製品の採用が拡大しているという。 - 低遅延が求められる産業機器のエッジAI、ザイリンクスの処理性能は「GPUの8倍」
Xilinx(ザイリンクス)が産業機器や医療機器、監視カメラなどISM分野の事業戦略について説明。FPGAやプログラマブルSoCなどを用いた同社のソリューションは、ISM分野で求められる低遅延の条件において、GPUと比べて最大8倍のAI処理性能を実現できるという。 - 「世界最小」の組み込みFPGAエッジコンピューティングモジュールを開発
PALTEKは、ザイリンクスの「MPSoC」を搭載した「世界最小」(PALTEK)とする組み込みFPGAエッジコンピューティング向けの「So-Oneモジュール」を開発した。エッジ側の情報機器端末に、5Gの普及で必要な高速演算処理を実行できるエッジコンピューティングを実装可能になる。 - ADASや自動運転で躍進、ザイリンクスが訴える「柔軟性」と「拡張性」の価値
ADASや自動運転システムの開発が進む中、車載向けデバイスで躍進しているのがFPGA大手のザイリンクスである。2017年には26メーカー、96車種に採用されたとし、累計で4000万ユニット以上の出荷となったという。同社が訴求するのがFPGAの持つ「柔軟性」や「拡張性」がこれらの車載向けの新ソリューションに適合するという点だ。