絶対に押さえておきたい製品化におけるコスト見積もりの基礎知識:アイデアを「製品化」する方法、ズバリ教えます!(7)(2/3 ページ)
自分のアイデアを具現化し、それを製品として世に送り出すために必要なことは何か。素晴らしいアイデアや技術力だけではなし得ない、「製品化」を実現するための知識やスキル、視点について詳しく解説する連載。第7回は、部品コストがどのような要素で成り立っているのか、適切な見積もり依頼の方法と見積コストの確認の仕方を取り上げる。
見積もり依頼での提示条件
見積もり依頼をするときの提示条件は、生産個数(一般的にはロット:○個/月)と生産期間である。生産個数×生産期間が総生産個数となる。この総生産個数によって、設計者は金型を作るか否かを決める。製品を設計する企業にとって、この総生産個数が売り上げにつながるため、企画時にはとても重要な値である。そして、部品メーカーにとっても、この総生産個数と金型を作る場合の金型費は自社の売り上げとなるので、とても重要な値だ。中国で見積もりを取得するときには、これらに加えて量産開始時期も大切である。いつからお金を得られるかの時期を示さないと、本気の見積もりはなかなか出してくれない。
部品を金型で作製する場合は、金型の取り数が部品コストに大きく影響する。金型の取り数とは、1つの金型でいくつの部品を作れるかのことである。1個取りや2個取り、ボタンのような簡単な形状の部品は、100個取りなどもある。取り数が多くなると金型も大きくなるので金型費は高くなるが、部品コストは安くなる。部品コストが安い分だけ製品の利益が増えるため、製品を設計する企業は部品コストに注目しがちである。一方、金型費は既に決めてある固定資産の予算内に入っていれば“問題なし”としてしまうことが多い。このようなことから、金型の取り数を必要以上に増やして部品コストを安く抑えていないかどうかの確認が必要だ。設計者が金型の取り数を部品メーカーに伝えていなかった場合、このような事態になりかねないので注意したい。
日本の材料を使用して中国などの海外で部品を生産するときには、保税制度を利用できる。保税制度を利用すれば、日本から輸出する材料費を関税の分だけ安くできるのだ。保税をするかしないかによって、見積コストが異なることを知っておきたい。見積明細書を入手していれば確認できる。なお、保税制度の詳細についての説明は割愛する。
見積もり依頼での取り決め事項
部品の材料価格は、部品メーカーと材料メーカーで取り決めた価格となる場合が多いが、製品を設計する企業が材料メーカーと直接コスト交渉して材料価格を決めれば、その材料価格で部品コストは見積もられることになる。同じ材料を大量に使用する場合や独自の材料を使用する場合には、材料メーカーと直接コスト交渉して材料価格を決めることが多い。
MOQ(最低発注数量)も大切だ。部品を購入する組み立て工場では、在庫はなるべく持ちたくないため、その部品を1回に使用する数量とMOQは同じ場合が多い。しかし、MOQには部品を輸送するカートンの大きさも影響する。1つのカートンに200個入る小さい部品があったとする。1回の使用量が50個であるためMOQを50個としてしまうと、カートンの4分の3は空気を輸送していることになり、輸送費のムダとなる。このような場合には、MOQを200個として3回分の量産部品(月1回の生産であれば3カ月分)を組み立て工場で在庫しておくことになる。こうしておくと、在庫のスペースは必要となるが部品コストは安くなる。カートンの大きさを小さくしてMOQを50個にする方法もあるが、あまりにも小さなカートンは物流量の多い大きな工場ではなくなりやすいので注意したい。
マシンチャージは装置の使用料である。例えば、樹脂部品を製造するときの射出成形の1時間当たりの使用料のことだ。これは、部品メーカーで既に決まっているので、ぜひとも一覧表を入手しておきたい。同じ部品を作るとしても、使用する装置が異なると部品コストも違ってくる。
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