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【演繹法実践編】要素を整理し、具体的な解決策を見いだすVUCA時代のエンジニアに求められるコンサルティング力(12)

VUCAの時代を迎える中、製造業のエンジニアという職業は安泰なのだろうか。本連載のテーマは、そういった不確実な時代でもエンジニアの強みになるであろう「コンサルティング力」である。第12回は、これまで説明してきた「演繹法」を使って、リモートワークの課題の解決法を具体的に考える。

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 今回は、前回まで説明してきた演繹法を使って、以前からのテーマであるリモートワークの課題の解決法を具体的に考えていきます。

⇒連載「VUCA時代のエンジニアに求められるコンサルティング力」バックナンバー

 課題は「リモートワークのメリットは認識されていたが、それを推進する体制がなかった」。演繹法の作業は、以下の3段階の手順で進めていきます。

  1. テーマを設定する
  2. そのテーマを分解して、詳細化していく
  3. その中から重要な要素を選択する

 まずは、テーマを「リモートワークの体制を整えるには?」としましょう。このテーマを分解して、解決法になりそうな要素を出していきます。要素を挙げていくポイントは、以下の4つでした。

  • MECE(モレなく、ダブりなく)を意識する
  • 要素を「3つセット」で出す
  • それぞれの要素の「順序」を意識する
  • それぞれの要素を「単語」ではなく「文」で表現する

「解決策のリスト」を整理する

 それでは、できるだけ自由な発想で要素を出していきましょう。ここでは、以下のような要素がランダムに出されたとします。

  • 推進する組織をつくる
  • 予算をとる
  • 社長/経営陣の理解を得る
  • 社員の理解を得る
  • マネジメント層を教育する
  • 個人のリモートワーク環境を整備する
  • IT活用のマニュアルを整備する
  • 人事評価システムを変更する
  • 社内規定を変更する
  • 理解促進のためのキャンペーンを行う
  • 専門のプロジェクトチームを編成する
  • 顧客への理解を周知する
  • 環境構築ができる専門家を採用する

 この時点で、要素が「単語」ではなく「文」になっていることがポイントです。次に、これらの要素を3点セットにしていきます。まとめるときに世の中にあるフレームワークを活用していきます。ここでは「ヒト・モノ・カネ」というフレームワークを使ってみましょう。まず、「ヒト」に関する要素を3点セットでまとめてみます。

<1つ目の箱>

  • 社長/経営陣の理解を得る
  • マネジメント層を教育する
  • 社員の理解を得る

<2つ目の箱>

  • 専門のプロジェクトチームを編成する
  • 推進するリーダーを決める
  • 環境構築ができる専門家を採用する

<3つ目の箱>

  • IT活用のマニュアルを整備する
  • 人事評価システムを変更する
  • 社内規定を変更する

 <1つ目の箱>の要素は「社内の意識統一」に関わるものです。同じように、<2つ目の箱>は「人や組織の整備」、<3つ目の箱>は「人に関連する仕組みづくり」に関わります。それらが、前回説明した「中間概念」に当たります。また、それぞれの3点セットの順番は、「実際に解決策を進めていく順序」となっています。

 なお、<2つ目の箱>に、最初の要素出しの段階ではなかった「推進するリーダーを決める」という項目が入っています。これは、3点セットをつくる過程で出てきた要素です。このように、3点セットで考えることによって新しい要素が出てくる可能性があります。

 同じように、モノとカネで3点セットを入れる「箱」をつくっていきましょう。ここでは「モノ=環境」「カネ=予算」と考えます。それぞれ、以下のように整理してみます。

環境

<1つ目の箱>=推進する組織づくり

  • 新しい部署をつくる
  • 専門のプロジェクトチームを編成する
  • 社外パートナーを活用する

<2つ目の箱>=ITインフラ整備

  • ソフト面
  • ハード面
  • マニュアル

<3つ目の箱>=ルール策定

  • 社内規定を変更する
  • 部内ルールを変更する
  • 人事評価の仕組みを変更する

予算

  • 人財への投資
  • 設備への投資
  • 運用への投資

 上記のように、「ヒト=人」と「モノ=環境」の要素に重複があるケースもあるし、最初の要素出しで出ていなった新しい要素も加わっています。また、予算に関しては「箱」はなく、3点セットだけになっています。実際に解決策を出していく場合は、このように柔軟な形になるケースがほとんどです。目的は「要素をきれいにそろえること」ではなく、「有効な解決策」を見いだすことですから、形に捉われ過ぎずに要素を出すことが必要です。



 ここで整理された要素が、すなわち「解決策のリスト」となります。ここから、実行可能な解決策を見極め、提案書をつくることが次の段階です。どの解決策を選ぶかは、会社の状況や誰に提案するかによってケースバイケースですが、提案書のつくり方には定石があります。次回、提案書のつくり方のポイントをご紹介して、この連載の最終回としたいと思います。

筆者プロフィール

アデコ株式会社 太田 剛

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大手メーカーへ新卒入社し、エンジニアとして勤務後、2005年にエンジニア派遣事業を展開する株式会社VSNへ中途入社。エンジン、トランスミッション、エアーバッグ、カーオーディオ、ブレーキ、メーターなどの頭脳部分となる車載用マクロコンピュータの開発に従事後、エンジニア全体の組織の管理職としてエンジニアの組織化を推進。

その後、問題解決の育成プログラムの構築やコンサルティングサービスの促進を担当。2021年1月からグループ会社であるアデコ株式会社のアウトソーシング部門へ出向し、請負業務におけるコンサルティング視点での活動強化に携わる。

アデコグループジャパン https://www.adeccogroup.jp/

Modis VSN https://www.modis-vsn.jp/

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