情報を「整理」「要約」して本質を導き出す――リモートワークの生産性を題材に:VUCA時代のエンジニアに求められるコンサルティング力(8)
VUCAの時代を迎える中、製造業のエンジニアという職業は安泰なのだろうか。本連載のテーマは、そういった不確実な時代でもエンジニアの強みになるであろう「コンサルティング力」である。第8回は、リモートワークの生産性を題材に、帰納法を用いた「整理」と「要約」を実践してみる。
今回は、前回までに説明してきた帰納法を用いた「整理」と「要約」の実践編として、「コロナ禍におけるリモートワークで生産性が上がらない原因」を探ってみたいと思います。コロナ禍で、多くの企業はオンラインツールを使ったリモートワークを実践するようになりました。さまざまな調査結果を見ると、リモートワークで生産性が上がったと感じる人と下がったと感じる人の両者が存在しているようです。
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私は職場の仲間たちと、リモートワークにおいて生産性向上を阻害していると思われる要因をランダムに出し合ってみました。それが以下の項目です。
- 【リモートワークで生産性が向上しない要因】
- 時間管理が難しい
- 子どもが家にいる
- 上司とのコミュニケーションがとりにくい
- 評価が正しくされていない
- モチベーションの低下
- 業務フローが整っていない
- 情報共有ができていない
- 将来への不安がある
- テレビがうるさい
- ネットワーク環境が悪い
- 一人だと新しいアイデアがわかない
これらの雑多な要素を整理してみましょう。まずは、共通項目を探してみます。その際「3つにわける」を意識していきます。項目の内容をざっと見渡してみると、どうやら「働く環境」「個人」「会社」という共通項がつくれそうです。
次に箱を並べる「順序」ですが、4種類の順序のうち、大きさに基づいた「構造」を適用して、「会社」「働く環境」「個人」という並びにします。順序が決まったら、それぞれの箱に情報をどんどん放り込んでいきます。前回お話ししたように、どこに入れていいか迷う項目があったとしても、意味あいを捉え、さまつなものであれば捨てて、どこかの項目に入れてください。全ての情報を箱に入れると、以下のようになります。
次に、箱の中の要素について順序を整えていきます。「会社」と「個人」は取りあえず「序列」の順で並び替え、「働く環境」はちょっと順序をつけるのが難しいのでそのままにしておきます。あまり細かいことにこだわらず、ざっくり並べていくのがコツです。また、この時点でダブりがある要素や、さまつだと思われる要素は省いてしまっても構いません。それぞれの中身を並べ替えると以下のようになります。
情報を一つの要約に収束させていく
さて、ここからが今回の話のキモとなる「要約」の作業です。要約は多くの場合、文章の形となります。以下のような感じです
【会社】
「業務フローが整っておらず、情報共有もできていないので、上司とのコミュニケーションが不足し、評価への不満が生じている」
【働く環境】
「自宅では静かに仕事をする環境やネットワーク環境が整っていない」
【個人】
「時間管理が難しく、アイデアもわきにくいので、モチベーションが低下し、自分の将来が不安になってきた」
これで3つの要約が出そろいました。さらにもう一段階進めて、「要約の要約」をしてみます。例えば次のようになるでしょう。
「会社の制度や仕組み、自宅環境ともにリモートワークを想定したつくりになっていない。それが働く意欲を阻害している」
いかがでしょう。これが帰納法に基づいた「整理」と「要約」の結果導かれた「コロナ禍におけるリモートワークで生産性が上がらない原因」です。この一連の作業を図にしたのが、ロジックツリーです。雑多な情報が一つの要約に収束させていくイメージをぜひつかんでいただきたいと思います。
次回は、プロセスの3段階目の「仮説を立てる/問題を見つけ出す」における「観察的要約」と「洞察的要約」を深掘りしていくことにします。
筆者プロフィール
株式会社VSN 太田 剛
大手メーカーへ新卒入社し、エンジニアとして勤務後、2005年にVSNへ中途入社。エンジン、トランスミッション、エアーバッグ、カーオーディオ、ブレーキ、メーターなどの頭脳部分となる車載用マクロコンピュータの開発に従事後、エンジニア全体の組織の管理職としてエンジニアの組織化を推進。
現在は、VIコンサルティングオフィスの室長として、コンサルティングサービスを促進するとともに、取引先企業の経営層に対する戦略コンサルティングサービスを担当する他、問題解決の育成プログラムの構築から実施を行う。
Modis VSN https://www.modis-vsn.jp/
(株式会社VSNは、事業ブランドの名称をModis VSNに変更しました)
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