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あなただけの「最高のお茶体験」を提供する、“IoTティーポット”ができるまでモノづくりスタートアップ開発物語(9)(3/3 ページ)

モノづくり施設「DMM.make AKIBA」を活用したモノづくりスタートアップの開発秘話をお送りする本連載。第9回は、モーターやセンサーを内蔵した“IoTティーポット”を製品化したLOAD&ROADを取り上げる。試作品の段階では「お茶を入れたポットから直接飲む」という方式を取っていた同社。しかし、便利だがこれで本当に「最高のお茶体験」を提供できるのか疑問を抱く。

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ガラスメーカーに断られた「D型ポット」

――いわばフルモデルチェンジを行ったのですね。

河野辺氏 2018年秋に、インフューザーとポットのプラスチック製試作機ができました。試用を始めると、インフューザーには茶渋が付きやすいので手入れが容易なステンレス部品を使用すべきだと分かりました。また、想定よりポットが傷つきやすいことが分かったので、より硬いガラスに変更する必要もありました。しかし、ここで大きな難題に直面したのです。

 ガラスは製造方法の関係で、丸い円柱のような構造に仕上げるのが一般的です。ところが、私たちのティーポットは安定的にインフューザーを回転させるために、ポット側面の接触部にモーターを設置しています。この接触面をインフューザーにできるだけ近づけるために、ポットの形状はアルファベットの“D”のような直線部分が必要になります。ところが、この形状が独特のものだったためか、依頼した国内のガラスメーカー全社に製造を断られてしまいました。


プラスチック製のプロトタイプ機。磁力でインフューザーを回転させるために直線的な側面が必要となり、D字型のポットを考案した*出典:LOAD&ROAD[クリックして拡大]

――どう打開したのですか。

河野辺氏 中国のガラスメーカー約50社に依頼メールを出しました。「できる」と返信してきたのが約20社で、話を聞いて条件を詰めたところ5社に減り、結局は2社から「D型ポット」を納品してもらいました。

 ちなみに、ガラスの寸法の誤差は±1〜2ミリと、プラスチック(±0.05〜0.1ミリ)より大きくなります。このため、モーターとポットの接着面の寸法精度を狙い通りに合わせるために製造工程を改善しました。こうした努力の結果、ようやく量産化の道筋が見えてきました。

――今後どう事業を展開していきますか。

河野辺氏 専用アプリは、「お茶を飲んでどんな気分になりたいか」をユーザーが選択できるようにするなどアップデートを繰り返しています。また、サブスクリプションで販売している茶葉セットの各包にQRコードを付け、アプリで読み込むだけで茶葉の種類が自動選択されるような工夫を加えました。

 お茶の世界はいろいろな流儀があります。私ももともとはお茶の素人からスタートしていますので、お茶のプロの方々が当社製品を面白がり、いろいろなアイデアやアドバイスを提供してくださったのはとても心強いものでした。株主であるDMM VENTURESや、各分野のパートナーからサポートを受けながら、お茶を楽しむことの自由度を高めていきたいと考えています。

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